フライボール革命&バレルゾーンとは?〜ホームランバッターになるための知識〜

こんにちは
BASEBALL FUTUREの
依田徹平です。

2018年に海を渡った大谷翔平選手が2021年46本の本塁打を放ち惜しくも本塁打王は逃しましたが、投手としての活躍も評価され2001年のイチロー選手以来、実に20年ぶりに日本人としてMVPを獲得しました。この活躍は日本で野球をする少年・少女たちに大きな夢を与え、日本人でもMLBでホームラン王を狙えることを示してくれました。

ちなみにこれまで日本人で1シーズンに最も本塁打を打ったバッターは松井秀喜選手でその記録は31本でした。この記録はこれまで数多くの日本人打者がMLBに挑戦しても抜くことも迫ることもできなかった記録なので途轍もない記録ではあるのですが、「あの松井秀喜でも31本しか本塁打が打てない」ということがMLBのレベルの高さを証明しています。

さてそんな記録に並ぶどころか、15本も記録を更新し本塁打王まであと一歩まで迫ってしまった大谷翔平選手と松井秀喜選手にはどのような違いがあったのでしょうか?ここでキーワードとなるのは近年注目されている「フライボール革命」や「バレルゾーン」と呼ばれる言葉です。

フライボール革命とは?

まずはフライボール革命について。すでにご存知の方もいるかと思いますが改めて私の視点から解説をしていきます。
近年セイバーメトリクスと呼ばれる選手を評価する様々な指標がアナリストによって生み出されています。その一つに「OPS」というものがあります。OPSは打率よりもチームの得点数を高めるためには重要な指標だということが分かってきました。OPSとは出塁率+長打率によって表されます。簡単にいうと同じ出塁率なら長打が打てる選手の方が評価が高いということです。これにより選手としては打率を多少落としてでも長打が生まれやすいフライ系の打球を飛ばすことがトレンドとなってきました。

また、最近では各打者ごとの打球方向などの研究も進み極端な守備シフトを敷くケースが増えてきました。その結果ゴロを打ってしまうと長打も生まれないばかりかシフトの網にかかり、ヒットの確率も低く、フライを上げた方が明らかにヒットが生まれやすく長打も出やすいためOPSが高まるという研究結果が示されたのです。これによりMLBでは多くのバッターがフライを打つようになり、メジャー全体の本塁打数が大幅に増加していきました。この現象がフライボール革命と呼ばれるものです。

バレルゾーンの出現

このフライボール革命を語る上で外せないキーワードが「バレルゾーン」です。バレルゾーンとは簡単に説明するとホームランやヒットを打つために重要な打球角度と打球速度です。バレルゾーンに飛んだ打球は打率8割を超え、長打率も2.0を超えると言われています。しかし最低条件として打球速度が158km/hを超えていること。この速度であれば26°〜30°の打球を打つことで長打の可能性が高まります。バッターはこのバレルゾーンを狙うことで高い確率でヒットを打つことができそれが長打になるということです。

バレルゾーンに打球を飛ばすには・・・ボールの中心から0.6cm下の部分を上向きに約19度の軌道でバットを当てる↓

つまりバットは上から下ではなく下から上にインパクトを迎えることが必要ということです。

バレルゾーンの角度は打球速度によって以下のように変化します。
159km/h →25°〜31°
161km/h →24°〜33°
187km/h →8°〜50°

バレルゾーン

この数字から分かることは
・187km/hの打球速度の場合どの角度で打球が飛んでもある程度長打になるということ
・逆に159km/h以下の場合は角度が上がりすぎてしまうとヒットにはならないが24°〜29°くらいの角度をつけて低いライナーから上がり過ぎないフライを狙うことで安打の確率を高めることができると考えられるということ

前述のフライボール革命はこのバレルゾーンがあってこその現象といえるでしょう。

大谷翔平と松井秀喜のスイング軌道の違い

フライボール革命とバレルゾーンを踏まえて改めて大谷翔平選手と松井秀喜選手のスイングの違いを考えていきましょう。まずは下記比較画像をご覧ください。

この画像を見ると同じコースであってもスイング軌道が明らかに違うことがよく分かると思います。松井選手のスイングはボールを下から上に捉えているものの大谷選手のスイングと比較するとどちらかというと地面に対して水平なレベルスイングといえるでしょう。
対して大谷選手のスイングはインパクトのバットの角度とフォロースルーのバットの角度を観察すると下から上にバットをスイングするいわゆるアッパースイングだといえるでしょう。

この画像はどちらもホームランにはなっていますが、どちらのスイング軌道がよりバレルゾーンに打球を飛ばす確率が高いかという視点でのみ評価をした時、結果は大谷選手の方が確率が高くなると直感的に理解ができると思います。

またこちらの動画も参考になります。巨人時代の松井選手とメジャーの本塁打王バリーボンズのホームラン競争です。松井選手のスイング軌道とバリーボンズ選手のスイング軌道の違いをフォロースルーに注目しながら比べてみましょう。

松井選手→レベルスイングで横振り
バリーボンズ選手→アッパースイングの縦振り
(アッパースイング=縦振りという訳ではありません)

横振りのスイングはミートしやすいというメリットはありますが、バットをこねやすく完璧に捉えてもファールゾーンにボールが入ってしまう可能性があります。その点縦振りの方が捉えた時にフェアゾーンに打球が飛びやすいと個人的には思います。

BLASTを使ってレベルスイングとアッパースイングを比較

さてここでBLASTという測定器を使って水平なスイング(レベルスイング)とアッパースイングについて解説をしていきます。

BLASTはバットのグリップに装置をつけることによってスイング軌道やバットスピードなどを計測することができるツールで大谷翔平選手も使用しています。

BLAST BASEBALL測定画面↓

 

まずはバレルゾーンを意識したアッパースイングと水平を意識したレベルスイングを行いBLASTでアッパー角度を計測していきます。
下記動画をご覧ください。

この動画をみると「バレルゾーンを意識しアッパー気味にスイングをした軌道」と「水平を意識したスイングの軌道」の差が良く分かると思います。

まずアッパースイングの場合

振り出しからグリップの高さはそれほど変えずにヘッドだけが落ちていきます。そこからボールに向かって落ちたヘッドが上がってくることで19°の角度でボールを捉えやすくなり角度のついた打球が飛ぶようになります。

水平なスイングの場合

振り出しからのグリップの高さは変わりませんが、ヘッドもそれほど落ちずグリップよりもやや低いくらいの位置からボールに向かってバットが出ていきます。これによりヘッドがボールの軌道に入りやすくミートがしやすくなりますが、角度がつきづらいため飛距離を出すのが難しくなります。BLASTの測定画面比較↓

では単純に下からスイングすれば良いのかというとそういう訳ではありません。なぜならばアッパーにも良し悪しがあるからです。こちらの動画をご覧ください。

 

動画を見て分かるとおりグリップの位置が下がりすぎてしまったり、トップハンドが体から離れすぎてしまうとバットは極端に遠回りをしてしまうので、特に速球に対してミート率が一気に下がってしまいます。なのでヘッドは落としてもグリップは落とさないということを心がけましょう。そのためには多少前の脇を開けることも必要となってきます。(もちろん低めなどの対応をする時にグリップの位置が下がることはあります。)

ここまでがフライボール革命によるバレルゾーンの解説とバレルゾーンを意識する際の注意点となります。主にフライボール革命やバレルゾーンのメリットについて解説をしていきましたが次回はデメリットの部分にも目を向けてみたいと思います。

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