野球のトーナメントで勝ち続けるには〇〇をつけることが重要
こんにちは
BASEBALLFUTUREの
依田徹平です。
トーナメントのプレッシャー
日本のアマチュア野球はトーナメント形式での公式戦が多く1回負ければ終わりというプレッシャーの中、勝ち上がっていかなければいけません。もちろん元々の実力が試合に影響を与えるのは間違いないですがそのプレッシャーにまず打ち勝たなければ実力の半分も出せないので力が拮抗した相手同士の戦いではこのプレッシャーに勝てるかどうか、実力が出せるかどうかがとても重要になってきます。
特にそのプレッシャーが強くなるのはトーナメントの初戦です。初戦の入り方は難しいとよく言われますが、高校野球でもよくこの初戦に波乱が起きます。優勝候補や実力を持ったシード校が初戦で負けるという話を聞いたことがありませんか?実力差がある中でこうした現象がよく起こるのは実力だけではなく精神状態が試合結果に大きく影響している証拠だといえるでしょう。
練習試合の1勝と公式戦の1勝
ではこうしたプレッシャーに打ち勝ち実力を出し切ったり実力以上の力を出すには何が必要なのでしょうか?
それは「自信」ではないかと私は思います。
こうして書くと「そんなことか」と思うかもしれません。しかしこの自信というのは馬鹿にできません。先程例に挙げた公式戦の初戦でシード校が負けるという話ですが、なぜ実力があり自信を持っているはずのシード校が格下相手に負けるのかというと、シード校が初戦なのに対して相手チームは初戦を勝ち上がってきた2回戦だからです。 ご存知の通り基本的に育成年代の野球は試合よりも練習の日数の方が圧倒的に多いです。(チームによっては例外もありますが)その為、自分のチームが強いのか弱いのかを知る機会は意外と少ないのです。当然大会前に練習試合をたくさん組み強いチームに勝つことで自信をつけることもできますが、練習試合の一勝と公式戦の一勝では自信のつき方に大きな差が生まれます。 その結果トーナメントを勝ち上がりチームとして自信をつけたチームを相手に迎えると、いくら実力のあるチームでも公式戦前に確固たる自信や圧倒的な実力差がなければチームが勢いづき実力を発揮し始める前に負けてしまうのです。
自信をつけさせるよりも自信をなくさせない
ではどのようにして自信をつければ良いのかという話になるかもしれませんが、私はそれよりも自信を無くすような行為を選手にしないことの方が大切だと思っています。実際問題として選手に自信をつけさせるのは容易ではありません。ですが指導者は選手の自信を奪うことは簡単にできてしまうのです。
私の実体験としてこんなことがありました。レッスンをしている時にアップの動きがなかなか上手くできない選手に対して細かい指導をしていると、逆に今までできていた動きもぎこちなくなってしまうということが起きました。なぜ急にできなくなったのか?と疑問に思ったのですが今になって考えてみるとおそらく指導されたことにより自分に対する自信を失い、結果的に今までできていた動きでさえも自信がなくなったことにより思い通りに体が動かなくなってぎこちない動きになってしまったのではないかと思います。
基本的に指導者である以上選手に対してある程度の指摘をしなければならない時がありますが、同じ言い方で同じことを選手に伝えても、選手によってはこのように逆効果になってしまうことがあります。そんな時は選手の性格を見極めて伝え方を変える必要があると実感しました。(その選手も伝え方を変えたことで動きは良くなってきました)
この例は選手個人に対してですがチーム全体としても同じように伝え方を間違えれば、チーム全体の自信を奪うことになりかねません。グラウンドでよく聞く言葉の例を出してみましょう。
試合に負けた時
「そんなんじゃ勝てない」
「お前らは歴代最弱だ」
「なんでこんなこともできないんだ」
練習で
「お前の代わりはいくらでもいる」
「いらないから帰れ」
「やる気がない」
こうした言葉は叱咤激励といえば聞こえはいいかもしれません。確かにこの言葉に奮起してチームが強くなるということもあるでしょう。しかしそれは選手が指導者のことを尊敬し信頼しており、本当に自分たちのために言ってくれていると理解できた時のみです。多くの場合こうした言葉は選手のためというよりも指導者が自分の思い通りにいかない時の八つ当たりに過ぎません。
選手も言われている言葉が自分たちのために言われているのか、それとも理不尽なことを言われているのかは理解できるはずです。もし理不尽なことで怒られているのであれば選手たちの心は離れていきます。
こうした何気ない言葉に選手は自信を失っていき、失った自信を取り戻す間もなく公式戦を迎えればプレッシャーに負けて実力を出す前に負けてしまうことは当然でしょう。
選手間での声かけやミーティング
自信を失わせないために指導者の声がけ・指導はできるだけポジティブなものである必要があります。これにより選手一人一人が野球に対する自信を持ち始めます。そうした自信に満ち溢れたチームは外から見ていても雰囲気が違います。具体的には選手間での声かけやミーティングの質が高いのです。指導者に罵倒されて自信を失ったチームは自信がないのでグラウンドで選手同士の声掛けや発言をすることがありません。(自分に自信がないのにチームメイトに何か言うことはできません)そしてさらに追い討ちをかけるように「声を出せ」と指導者に怒られ「怒られないための無意味な大声」を出し続けます。
ですが、自信に満ち溢れたチームは「声」の質が違います。具体的にはボール回しやノックの最中から。自信がないチームは怒られないために大きな声だけは出しますが、誰かがミスをすれば怒られると思い一気に静まり返ってしまいます。しかし自信に満ち溢れたチームは良いプレーをすれば「ナイスプレー」「ナイスボール」と盛り上がり少しでもミスが出れば選手同士で明るいヤジが飛び交います。こうすれば指導者も言うことがないので楽ですよね。
またランナーを置いたシートノックでも次のプレーに対する声かけが盛んに行われ連携ミスがあれば選手同士でミーティングをして解決をしてくれます。このように課題を選手間のミーティングで解決しそれがうまくいけば間違いなくチームの自信につながるでしょう。逆に全て指導者に言われてやっているようではいつまで経っても自分たちはダメなままだと思い込んでしまうので自信は生まれません。
何から始めれば良いのか?
こうした話をすると「うちの選手たちにはその能力がないから無理だ」「意識の高い子たちがいるチームじゃないとできない」と思うかもしれません。確かに小学生から中学生に上がりたての選手や高校1年生でも選手間の声がけや質の高いミーティングは難しかもしれません。そのためまず最初にやらなければいけないことは上級生を育てることです。
しっかりとした知識やチームのルールなどを根気強く教えていき、できる限り選手同士で問題を解決できる雰囲気をつくりあげていきます。ある程度自分たちで解決できるようになってきたら、あとはどうすべきか迷っている時だけ手を貸してあげましょう。問題を自分たちで解決できるようになれば確実に自信がつきます。気がつけば無意味な大声から意味のある声がけ、ミーティングができるチームになってくるでしょう。
人間は良くも悪くも環境に流されやすい生き物です。そうした上級生の姿をみれば下級生も気がつけば同じことができるようになってくるでしょう。またチームに入りたての1年生も指導者だけではなく上級生からそうした雰囲気や野球の知識、チームのルールを指摘してもらうことで大人からやらされる練習はなくなり、自主性が育まれ自信を持つようになるでしょう。
この育まれた自信こそがプレッシャーのかかる試合で実力を発揮することにつがなります。私も色々なチームを見てきましたが、選手個々の能力は高くても勝てないチームはやはり指導者にやらされている雰囲気が強く声掛けもミーティングも質が低いです。逆にそこまで強くなさそうなのに大会で勝ち上がるチームはとても雰囲気が良く、試合でも実力を出せるのでどんどん勝ち上がります。勝ち上がることで自信はさらに深まるので気がつけば実力以上のものがプレーに出始めて格上相手にも勝利を納めてしまうのです。
メニューや方向性をうまく導いてあげるのが指導者の役目です。難しい課題ですがこのサイクルができれば指導者むしろ今より楽になるでしょう。そのためにも根気強く選手と向き合い自信を持たせてあげられるような取り組みを行ってみましょう。