バッティングの調子を維持するためには?

こんにちは
BASEBALL FUTUREの
依田徹平です。

夏の高校野球も終わりこれから秋季大会や大学野球の秋のリーグが開始されます。ある程度結果を残しレギュラーが取れそうだという打者はこれからいかにその調子を落とさずにいられるかが勝負となります。そんな時どのようにしてコンディションを整えるべきかをお伝えしていきます。

・フィジカルコンディション
・良い時のフォームを知る
・練習をしすぎない?
・ルーティーンを作る?

フィジカルコンディション

まず最初に大切になってくるのはフィジカルコンディションを整えることです。身体の痛みを抱えていたり、筋肉が弱ってくれば当然そこを庇うような動作を無意識にとってしまいフォームのバランスは崩れていくので常に体のケアを心がけましょう。

ポイントはセルフチェックを行うことです。ウォーミングアップをしながら身体を動かしている時に身体の部位ごとに違和感や硬さが出ているところがないかをセルフチェックしましょう。違和感があるのであればそこを入念にケアしたり、時には行きつけの接骨院や治療院に通うようにしましょう。長いシーズンを戦うプロ野球選手もオフの日にはそうした身体のケアを入念に行なっています。私が通わせていただいている接骨院にもたくさんのプロ野球選手が来ており、一流選手ばかりが来ていることからケアの大切さが伺えます。

また体重に関してもチェックが必要です。体重が落ちてくれば当然体のバランスが崩れていき今までとは感覚が変わってしまいます。その結果フォームを変える気がないのに勝手に変わってしまい、調子を落としていくので注意しましょう。

良い時のフォームを知っておく

次に大切なことは良い時のフォームを知っておくことです。調子が悪い時は調子が上向くように色々と考えながら振っていくと思いますが、調子が良い時は逆に何も考えずに好き放題打ってしまう選手が多いです。その調子が良い時に行なって欲しいのがフォームを記録しておくことです。スマホなどを使い色々な角度からフォームを撮影しておくと調子が悪くなった時にどこが悪くなったのか?が比較しやすくなります。そうすれば多少調子が悪くなってもすぐに調子を戻すきっかけを掴むことができるのでぜひ撮影をしておきましょう。

またその時の感覚やイメージも添えて記録を残しておくとさらに良い時の感覚を思い出しやすくなりますので動画と共に感覚も記録しておきましょう。
例)手から動き出すイメージ 股関節に乗るイメージ など

練習をしすぎない

今回最も伝えたいことはこの部分です。練習をしすぎてはいけないというと語弊があるかもしれませんがこれには前提条件があります。

前提条件

①ある程度のレベルでスイングができている(例えば高校野球や大学野球でレギュラーを取るレベルにあること)
②今現在調子が良く結果が出ている

順を追って説明をしていきます。

まず①ある程度のレベルのスイングができていない場合、目の前の試合で結果を残すことよりも先を見据えて良いスイングができるように努力をする必要があります。特に学童野球の選手が目の前の試合で結果を残すために今の状態を維持しようと思っているといつまで経ってもフォーム修正ができず悪い癖が残ったまま試合に出続けてしまいます。小学生のうちはそれでも試合で打てるかもしれませんが、中学・高校と進むにつれ投手のレベルも上がってきます。すると途端に打てなくなってしまいます。そうなった時に長年培った悪い癖を修正するのはとても難しくなるので発展途上の段階では目の前の試合のためだけのコンディション維持よりも将来を見据えたフォーム改善のためにしっかりと練習を行いましょう。もちろんあまりにも調子が悪い時にはリフレッシュのための休養も視野に入れてください。

②の条件は現在結果が出ていることです。これは単純に悪い状態の場合はそれを修正するために練習が必要ですがある程度高いレベルでスイングができており結果が出ている場合は大事なシーズンに向けてその状態を維持する方が優先となるからです。

座間東中野球部

練習しすぎて調子を崩す?

以上2つの前提条件のもとなぜ練習をしすぎてはいけないのかというと、逆に調子を落としてしまう可能性があるからです。例えば打てている選手にもっと良くなるために大会期間中に素振りを毎日1000本させたとしてもっと結果が出るようになるでしょうか?

もちろん絶対に結果が出ないということはありませんが、私は逆に調子が悪くなってしまう可能性の方が高いと思います。

打撃フォームというのはとても繊細な動きで一箇所が悪くなれば全てのバランスが崩れてしまい打てなくなってしまいます。その繊細な動作を維持しなければならない時、素振りを1000回強制的に行わせれば必ず疲労から雑な動きをするようになってきてしまいそれが癖となってしまう可能性があります。

繰り返し動作は脳にも悪い?

実はこうした反復練習を過度に行いすぎてしまうことは脳の機能的にも良くありません。例えば自分の名前を100回続けて書こうとしてみてください。そうすると徐々に頭が混乱してきて何を書いているか分からなくなってしまいます。これはゲシュタルト崩壊と呼ばれる現象で、スポーツとはまた別ものですが、個人的には野球やその他の動きを伴うもの全てに同じことが言えると思います。

同じ打ち方を繰り返し行うことでスイングは定着してくるものですが、それも度が過ぎると異常をきたし、逆に動きが悪くなってしまうことがあります。バイオリニストなども稀に練習をしすぎて、弾けなくなってしまうということがあるようですが野球の場合も素振りを「同じような状況」で行い過ぎるとどこかで神経回路に異常をきたし、いつの間にか「いつも通り」ができなくなってしまうのです。

いつも通りができなくなると聞いて「イップス」を想像した人も多いと思いますが、実はイップスも同一動作を過剰に繰り返すことにより脳の構造変化が起こり発症する可能性があることが明らかになっているのです。

天才打者の共通点

私が現役の頃から指導者となった今に至るまでみてきた中で天才的なセンスを持つバッターが何人もいましたが、その選手たちの共通の特徴は数をこなす練習の少なさでした。状態が良い時は本当に20回程度の素振りで自主練習を切り上げたりしています。もちろん高いレベルでの話なので全選手がそれに当てはまる訳ではありませんが、彼らはやり過ぎると調子が悪くなるということを本能的にもしくは経験上分かっていたのではないでしょうか?

イチロー選手も努力家のイメージがありますが、実は最近になって高校時代は全く練習をしていなかったという情報もあるくらいです。

↓高校生イチローは“練習しない天才”? 同級生が語る真相

https://number.bunshun.jp/articles/-/854247

二刀流のために捨てたものの副作用

また昨年もMLBで大活躍をした大谷翔平選手は二刀流としての活躍が評価されMVPを獲得しましたが、その背景には「練習をしすぎない」という調整法が上手く機能したことが挙げられます。

昨年はそれまでとは違い登板日にも打席に立つ「リアル二刀流」を解禁し、さらに今まで登板日前後の試合は疲労を考慮して欠場していたところ昨年は登板日前後の試合もバッターとして試合に出場するようになりました。長いシーズンを考えると当然身体への負担が心配されます。そこで大谷選手はバッターとしての練習時間を大幅に減らすことにしたようです。これにより疲労が軽減したことは間違いありませんが、疲労軽減以上に練習をしすぎなかったことがホームラン量産の鍵となったと私は思っています。

大谷選手の場合は先ほど記した
①ある程度のレベルでスイングができている
②今現在調子が良く結果が出ている
という前提条件をクリアしています。ただし、大谷選手はそもそも負担軽減が目的であったためバッターとしての調子が多少悪くて②の条件を満たしていなくてもあえて練習をしすぎないという選択をしていたようです。

ルーティーンを作る

練習をすればするほど好調の状態を維持するのが難しくなりますが、全く練習をしなければそれはそれで問題が出てきます。そこでおすすめなのが様々なパターンの素振りやティーバッティングを行い状態を整える方法です。ヤクルトの山田哲人選手がトリプルスリーを初めて達成した時、10種類以上のティーバッティングを行なっていたことが有名ですが、それも調子を整えるために行なっていたものと思われます。

試合での打席やフリーバッティングなどピッチャーに合わせて行うバッティングは素振りとは違いフォームを乱してしまう可能性があります。それを毎試合フラットな状態に戻すために様々な種類のティーバッティングを行い修正をしているのです。

つまり、同じような素振りをただひたすら数だけ繰り返すよりも、山田選手のように状態をフラットに整えるための様々なバッティング動作をルーティーンとして作り上げることが脳の機能的にも好調維持にも大切ということです。

先ほどイチロー選手は高校時代あまり練習をしていなかったのでは?という記事をご紹介しましたがプロに入ってからは皆さんご存知の通り練習方法から食事、ネクストバッターズサークルから打席中に至るまで独自のルーティーンが組まれてしました。このルーティーンがメジャーリーグで10年間3割を打ち続けられた要因の一つだと勝手ながら思っています。

さてではいきなりイチロー選手のようなルーティーンを作るとなるとハードルが高くなってしまいますが、まずは素振りやティーのバリエーションを増やしてみてはいかがでしょうか↓回数でいうと1種目10〜20くらいで充分だと思います。

この他バットの長さや重さを変えてみるというのも良いと思います。

状態を維持するための方法は人それぞれですが、好不調の波が激しいという選手はこうした練習を程よく取り入れてみてはいかがでしょうか?もちろん現状維持が必要ないシーズンオフなどは積極的にもっと上手くなるための練習を行いましょう!

ps.

フリーバッティングのやり過ぎは同じ素振りの繰り返しとは別の理由で状態が悪化することがあります。素振りは自分のスイングができますが、フリーバッティングや実践形式の練習はピッチャーに合わせる必要があります。そうすれば知らず知らずのうちに自身のフォームが崩されていきます。実際に私もレッスンをする選手の調子が突如乱れた時、週末に何をしたかを聴くとやはり試合続きであったり、フリーバッティングの特にマシンでのバッティングでタイミングを狂わされたと答える選手が多くいます。なのでフリーバッティングも良い感覚で打てたのであれば状態を維持するためには早めに切り上げることも重要です。

それでもずっと打ち続けなければならない状況の場合は逆方向を強く意識してスイングをしたり、バスターを取り入れたりするなどバリエーションを増やして対応したり、フリーバッティング後に状態を整えるためのティーや素振りをしてから練習を終えるようにしましょう。

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