野球指導において型にはめない指導の難しさ
こんにちは
BASEBALL FUTUREの依田徹平です。
「型にはめた指導」というとマイナスなイメージがあると思います。実際問題、選手にはそれぞれ体格の違い、身体能力の違い、感覚の違い、考え方の違いがあるので型に嵌め込んだ指導はしてはいけないと誰もが口を揃えて言うことでしょう。逆に「型にはめて指導をします」ということを宣言する人は珍しいと思います。
しかしながら、実際の指導現場や選手の意見を聴くと「この打ち方or投げ方以外認めない」「俺のいう通りにしないと試合に出さない」といった言葉をかけられることや、言葉はなくても実質的にそうなっているチームがよくあるようです。
何が言いたいかというと、型にはめた指導はダメだと頭では分かっていても実際にそれを行うことはとても難しく多くの指導者が型にはめて指導をしてしまい結果的にハマらない選手がその才能を潰してしまうことがよくあるということです。これは私自身も指導をしていて気をつけてはいるところではありますが、気がつかないうちに型に嵌めようとしてしまうことがあるので注意をしなければいけないですね。
ではなぜ指導者は選手を型にはめようとしてしまうのでしょうか?
原因の一つに挙げられるのはたった一つの成功体験です。例えば指導した選手の中にプロ野球選手が出たとします。そうするとその選手を指導した方法が正しい方法だと錯覚をしてしまいます。その指導方法は確かにプロ野球選手になった方には合っていたのかもしれませんが全ての選手にそれが当てはまるとは限りません。こうしたことも冷静に考えれば理解できるのですが、プロ野球選手を誕生させたという事実が邪魔をして視野が狭くなってしまうのでしょう。
上記の例は極端ですが、例えば名門チームに行くような優秀な選手を一人でも知っていると同じように成長をしてほしくて同じような指導をしてしまうということもあると思います。さらに自分の現役時代の成功体験をそのまま選手に当てはめてしまうこともあるでしょう。(これが一番多いかもしれません)
またチーム単位で考えると全国大会に出場した代の選手たちと全く同じことをやれば全国大会に行けると思ってしまい、「あの代はもっとこうだった」と知らず知らずのうちに型にはめた指導をしてしまうというケースもあるでしょう。しかしこのどれも上手くいかないことがほとんどです。なぜならば選手の個性がそれぞれ違うからです。
このような現象は生存バイアスの罠にハマっている状況といえます。生存バイアスとは例えば全く同じ指導を1000人に行います。その内の1人に指導がマッチし晴れてプロ野球選手になったとします。そうするとそのたった一人の選手の成功を元に「〇〇選手はこれをやったからプロ野球選手になれたんだ、君もやってみないか?」と指導がうまくいかず逆に下手になってしまった999人の例が全く見えなくなってしまう状況のことです。
この罠はとても危険で私も含めて多くの指導者が一度は陥る罠だと思います。
この罠から抜け出す方法はいくつかあります。まず一つ目は引き出しを多く持つことです。1000人いれば1000通りのフォームがあるのが野球です。しかしその中でも大きくいくつかの分類に分けることは可能です。最低限バッティング・ピッチング共に4つずつくらいのフォームの引き出しは必要だと思います。
一種類しか指導法がないと選択肢は一つなので必然的に型にはめた指導をしてしまいます。しかしその引き出しさえ用意しておけば選択肢が広がるのでその中からその選手に合う指導法を見つけようと思うようになります。このようにその選手に合った指導を追求するようになると引き出しはいくらでも広がっていくでしょう。
〇〇理論や〇〇打法と呼ばれるものも一度そうした名前がついてしまうと「あそこのチームは型にはめるからダメだ」といった噂が少なからず立ってしまうものですが、あくまでそれも引き出しの一つなので拒絶せずやってみることをおすすめしますし、指導者としても理解しようとすることが大切です。
実際私も色々な方の指導法を収集して試しています。自分が見つけ出した指導法が全てと思う必要も自分オリジナルのものしか選手に指導してはいけないという決まりもありません。色々な引き出し知識、経験を元に選手を指導してあげた方が結果的に選手のためになることは言うまでもありません。
指導者としてのプライドよりも選手の成長が一番
選手・指導者ともに新しい考えに触れる機会を大切にして引き出しを増やせるようにしていきましょう。