世界で通用するバッターになるなら連続ティーからやめよう 野球

こんにちは
BASEBALL FUTUREの
依田徹平です。

まず始めにこの『連続ティーからやめよう』というタイトルを見て、今まで連続ティーをやってきた選手や、連続ティーを指導してきた指導者の方は今までの自分を否定されたような感覚になるので読み進める勇気が出なかったり、反論が思い浮かんだりすると思います。私自身も連続ティーをやっていた時期があったので否定したい気持ちも分かります。しかし、バッティングというものの本質を理解すればするほど連続ティーは世界で活躍する将来性のある選手にとってはデメリットが大きいことがわかってきました。

それでも、やはり連続ティーが正しいと信じている方はその考えも否定しませんのでどうぞこのページを閉じてください。でももし少しでも興味があるという方はぜひ読み進めてみてください。

前回、日本人打者が世界で活躍するには?というテーマの中で日本代表というチームとしての活躍とメジャーリーグに挑戦する日本人打者の活躍が比例していないということを挙げました。その中で松井秀喜選手が現在MLBで活躍する大谷翔平選手のバッティングスタイルについて自身のスタイルとは対極にあり世界の強打者と共通して「ゆっくり振っているようにみえて遠くに打球が飛ぶバッティング」だと感じていることをお伝えしました。

今回は今後、日本人バッターが世界で活躍するために必要なバッティングの考え方についてお伝えをしていきます。少し長い内容ですが、今までのバッティングの常識を今アップデートしていかなければ将来有望な選手が活躍する可能性をあなたが奪ってしまう可能性があるということを認識して最後まで見ていただければと思います。

はじめに断っておきますが、今のままの日本的なバッティング指導でも才能がある選手はプロ野球選手にはなれると思います。しかし、世界で活躍する可能性を秘めている選手を育てるのであれば知っておいて損はない内容だと思います。

賛否両論意見が出ると思いますがぜひ最後まで読んだ上でご意見ください。

ヘッドスピードへの盲信

日本では昔からバッティングにおいてヘッドスピードを上げることが良いとされてきました。ヘッドスピードを上げることで打球が飛ぶようになり、速い球にも振り遅れなくなると考えられているからです。そのためこのヘッドスピードを上げるために多くの指導者が量をこなす素振りをさせてきました。特に連続ティーや連続素振りなどをとても速いスピードで行うことが良いとされており、リストを強化することでスイングスピードを上げようとしてきました。

こうした練習は日本の場合ほぼ全ての選手が経験しているのではないでしょうか?実際プロ野球の練習を見ても取り入れられているケースをよくみます。(特に2軍)

確かにスイングスピードは遅いより速い方が良いとは思います。そのためスイングスピードを計測することは成長を確かめる上でも大切なことです。しかしスイングスピードだけを盲信するあまり基本的なスイングの構造についての解釈や理解が置き去りになってしまっているのが日本野球の現状です。

さてここで以下の動画をご覧ください。

この動画は2種類の連続スイングの比較です。おそらく多くの選手や指導者は連続スイングというとスピードを重視した1つ目のやり方が良いと感じることでしょう。このスイングに対して2つ目のスイングはどこかゆっくり振っているようにみえます。おそらくスイングスピードを求めすぎる指導者からみれば悪いやり方なのでもっと速く振るように怒られてしまうかもしれません。

ですが実際にスイングスピードを測ってみると両者のスイングスピードにはそれほど差がありません。

ではなぜ1つ目のスイングはスイングが速く見えるのでしょうか?その原因はあくまで仮説ですがリストを強引に返し体からバットを離していくことにあると思います。連続スイングの速さを求めているのでとにかく「早く」リストを返して強引にヘッドを出していきます。リストを「早く」返すことでヘッドが「早い」タイミングで動き出すので結果的に「速い」動きに見えるのではないでしょうか?

 

しかし、この打ち方はリストより先は動いているものの、それ以外の下半身や胴体などはロックがかかったように止まっています。そして、下半身と胴体が止まることでフォロースルーが小さくなっています。またヘッドが「早く」ホーム上を通過しますがバットがボールの軌道に対して垂直になっている時間が短いことにも注目する必要があります。この時間が短いということは「こねている」とほぼ同じ意味なのでミート率が下がり、変化球にも対応が難しいことは言うまでもありません。

一方で2つ目のスイングはインパクトにかけて強引にリストを返すことなく体全身で少しずつ動いてヘッドをミートポイントに運んでいることが分かります。結果的に全てが動いているのでヘッドはリストの力で「早く」動かさなくてもホームの上まで動いてきています。また体にロックがかからないのでフォロースルーも大きくなります。さらに1つ目のスイングと比較するとヘッドをリストで動かしていないので比較的長い時間体の近くにバットがありボールの軌道に対してバットが垂直に近い状態も長い時間あります。

さてここまでくると何となく言いたいことが分かってくるかと思いますが、ヘッドスピードを上げるために速い連続ティー速い連続スイングをすることは、いわゆるこねる練習をしているのと同じなのです。またインパクトのポイントが体から離れることでボールに体幹の力を伝えづらくなり打球も弱く角度もつきづらく飛距離も出なくなるので実は非常にマイナス面が大きいのです。

それでもヘッドをリストで返してヘッドを出すスピードでボールを飛ばした方が飛びそうだと思う方もいると思います。そんな方は下の動画をみてみましょう。

この動画はヤンキースのアーロン・ジャッジ選手のバッティングでMLBで1シーズンに52本塁打を記録している選手です。このスイングを見るとインパクトにかけてほとんどリストを返さずに体の近くでボールを捉えていることが分かると思います。

スロー再生でスピード感が分かりづらいという方のために↓

次にこちらの動画を見てみましょう

このヘッドを素早く出す連続ティー動画を見てみるとかなり速いスピードでヘッドが走ってボールを捉えているように見えるので、ジャッジ選手のスイングに比べてヘッドスピードが速いと感じたのではないでしょうか?しかし、このスイングではリストの力しか使っておらず、ヘッドが返るのが速いので飛距離もでず、ミスショットも多く、さらには力むことで自分の感覚よりもバットの出が遅くなってしまうのです。※バットが出始めるのは「早い」が自分が思った感覚よりも遅くヘッドが出るので振り遅れる。

メジャーリーガーの動画を観て「これは海外選手のパワーがあるからだ」「日本人には真似ができない」と思う方はこちらの動画もご覧ください。

こちらのスイングはどうみてもスイングスピードが速いとはいえませんがしっかりとホームランになっていますね。厳密には落合選手のこのバッティングはメジャーリーガーのスイングとは別ものですが、スイングスピードが全てではないということが分かっていただけると思います。

日本の良さと世界で通用するバッティングは別物

これらのスイングを比較してみると前回お伝えした松井秀喜選手のコメントの意味が段々とわかってくるのではないでしょうか?

「実際にはそれなりにスイングスピードも速いんだけど、なんかボワーンと振っているように見えるのに、ボールにバットが当たった後の前(フォロースルー)が大きくて『エッ! 』っていうくらいにボールが飛んでいくんだよね」

松井秀喜氏が大谷選手とメジャーのトップ選手の共通点について語ったコメントNUMBER WEB(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文)より引用

もちろん松井選手やその他の日本人選手がみんな「こねながら悪いバッティング」をしていたわけではありません。どちらかというと日本的な良い打ち方をしているといっても良いでしょう。もっといえばこうしたリストを返し、ヘッドスピードを上げてスイングする打ち方が基本にあるからこそ、前回のブログで伝えたように一発勝負の短期決戦に強い繋ぎのバッティングがしやすくなり結果的に国際大会で日本が結果を残すことができたのだと思います。

 

ですが日本的な打ち方は、投手のレベルが高くなるにつれて通用しなくなっていくのです。なぜならば先ほどお伝えしたように、ヘッドが返るのが早くなることでミート力が落ち、角度があがらず、力も伝わらないことで飛距離が落ちていき、さらに自分が思った感覚よりも遅くヘッドが出て振り遅れてしまうからです。

日本のトップ選手はこうした日本的な打ち方もできますが、どちらかというとヘッドをなるべく出さずにインパクトができる選手が揃っています。また無意識に世界でも通用するようなスイングをすることがあります(無意識ゆえに再現性が低いのが残念ですが)。しかしそれ以外の選手は例え一軍に出ている選手でも連続ティーのようにヘッドを走らせようという意識でスイングしている選手が多く速球に対して振り遅れたり、バックネット裏へのファールが多かったり、ボールの変化球に対してバットが止まらずにハーフスイングを取られたりしてしまいます。

リストを返す選手・返さない選手

プロ野球選手でいうとわかりやすいのがロッテで活躍する藤原恭太選手です。藤原選手は典型的なリストを返すタイプの選手です。最近は持ち前のセンスでインパクトで片手を離してバットを止めるなどして良いところに打球を運んでいますが、染み付いたバッティングスタイルがなかなか抜けないためスイングスピードは速く見えるのに振り遅れたり思ったより打球が飛んでいない印象です。例外としてインコースを上手く振り抜くときはヘッドを遅らせて振る必要があるので自然とリストをあまり返さず大きいフォロースルーができています。今後どのようにバッティングスタイルが変わっていくのかが楽しみな選手です。

藤原選手に対してリストではなく体全体でヘッドを出していくのが大谷翔平選手のスイングです。もちろんタイミングを外されれば日本的なヘッドをリストで返す技術を持っていますがホームランを打つ時はほとんどインパクトをした後もヘッドをリストで返している様子はなく大きなフォロースルーができています。これができるからことメジャーの速球に対しても対しても振り遅れることなく捉えることができ、とらえてしまえば体全身の力で打球を飛ばすことができるのです。

またヘッドを返さないからこそ逆方向へ打球が伸びていくということも納得ができるのではないでしょうか?特にレッドソックスの本拠地フェンフェイパークで打った第11号の本塁打はグリーンモンスターといわれるレフトの高いフェンスをヘッドを返さないように片手で拾うことにより攻略しています。

もし日本的な打ち方であればリストを返してしまうのでヒットにはなるかもしれませんが、ホームランになる可能性は低かったでしょう。

こうした状況を変えていくには日本人のバッティングに対する考え方を改める必要があると思っています。その一つが最初にお伝えした通り連続ティーをやめることにつながります。特にただ「速さ」だけを求める連続ティーはこねるバッティングフォームやいわゆる手打ちスイングを作り出しているだけでデメリットが大きく今すぐにでもやめるべきだと個人的には思っていますし、日本ではよく行う連続ティーもメジャーでは一般的ではないという事実が連続ティーの無意味さを物語っています。

手打ちを止める改善練習①

ただし連続ティーもやり方次第ではとても良い練習をすることができます。

正しく行うポイントは

1.打者に合わせてゆっくりトスをあげる
2.下半身を使って体重移動
3.最後まで振り切る

下半身の体重移動を大きくするために低めのかなり手前にトスをあげてあげるのも良いでしょう。

この動画よりももっとペースを遅くしてフォロースルーを大きくしても良いくらいです。

こうした練習を繰り返すことで手でバットを振るのではなく体重移動と体幹を使ってバットを出してくる感覚が身に付きやすくなります。またバットを次のスイングに向けて上から戻していく動作を行うことでテイクバックからスイングの流れが効率化され無駄な動きがなくなっていきます。

手打ちを止める改善練習②

次にヘッドを出さないで体幹の力でインパクトをする感覚を養う練習としてこちらの練習方法をお勧めします。

この形で実際にティーを打ってみるとリストでヘッドを出さなくてもインパクトポイントにバットを出すことができることに気がつきます。また上手く体幹で捉えることができれば意外に打球が飛ぶことがわかります。こうした練習を繰り返すことでリストを返してヘッドを出していくのではなく体全体でヘッドを出していく感覚を掴むことができるようになるでしょう。

まとめ

リストを返すバッティング
・こねる
・打球が上がらない
・振り遅れる
・ポイントが前になる
・カットや繋ぎのバッティングには有効

リストを返さないバッティング
・こねづらい
・打球が上がる
・振り遅れづらい
・ポイントが後ろになる
・空振り率は上がる

今までの日本的な繋ぎのバッティングは確かに国際大会でも通用する日本にとっての大きな武器となります。そのためその良さを残すために全ての選手にリストを返す打ち方をやめろとは言いません。しかし、才能ある選手の中には何も言わずともリストを返さないバッティングをしているというケースがあります。そうした選手に対しては指導する側が選手の可能性や将来性を見極めて選手によってはリストを返さない方法を尊重してあげることも大切ではないでしょうか?







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