スラムダンク安西先生から学ぶ選手育成法とは?
こんにちは
BASEBALL FUTUREの
依田徹平です。
スラムダンクは1990〜1996年に連載されていたバスケットボールの漫画で、私も何度も読み返すほど魅力のある大人気作品です。今年は何十年もの時を超えて映画が作られるということで再び注目を集めています。
簡単にあらすじを説明すると、主人公で不良少年であった桜木花道が高校入学と共にバスケットボールを始める。最初は素人で活躍ができないが、持ち前の身体能力の高さと努力の結果わずか4ヶ月ほどで立派な戦力としてインターハイに挑戦し、選手としても人間としても成長を遂げていく物語です。
そんなスラムダンクの物語の中で主人公の桜木花道がインターハイを前に個人合宿を行う話があります。この合宿を計画したバスケットボール部の監督である安西先生のアプローチが今思い返すと、とても素晴らしく参考になるものでした。その内容を今回はご紹介していきます。
合宿を行った背景
まず合宿を行った背景から。
本来チームは静岡へ合宿に行く予定でしたが、桜木だけは安西先生の指示で学校に残り居残り合宿を命じられたのでした。プライドが高く自分だけが居残りということに納得がいかない桜木に対し、安西先生はゲームを持ちかけます。
それこそが合宿の目的となる「ジャンプシュート対決」でした。この対決に桜木が勝てればそのまま静岡に合流ができることになっていましたが、10本中9本シュートを決めた安西先生に対して、桜木は1本もシュートを決めることができず敗北をし居残り合宿が決定してしまいます。
データ分析
安西先生は最初に合宿の目的を桜木に説明します。県大会のデータを見ると桜木の得点はレイアップやゴール下のシュート、そしてダンクのみとなっていました。
つまり素人である桜木は「極めてゴールに近いところからしか得点ができない」ということです。全国大会でそうしたデータを相手が持っていたと想定すると、ゴールした以外の桜木へのマークは薄くなり他のメンバーへのマークが厳しくなってしまうとデータを元に客観的事実をプライドの高い桜木に伝え闘争心を煽ります。
(参照:スラムダンクより)
それと同時にこのような想像を桜木にさせます。
「もしデータを元にマークが薄くなったところでパスが周りジャンプシュートを決めることができたら?」
「わくわくしてきませんか?」
この言葉に桜木は「本当に入るようになるのか?」と一気にモチベーションが高まり一週間でシュート2万本を達成するというシュート合宿がスタートするのです。
(参照:スラムダンクより)
練習方法
最初に行ったことは練習を手伝ってくれることになった桜木軍団がこっそり撮影していた、シュート対決の動画を観ることでした。
(参照:スラムダンク)
そこに映っていた自分の姿に驚愕した桜木はビデオに細工をしたのではないかと疑いこれは自分ではないと言い張ります。そんな桜木に安西先生はこのような言葉を送ります。
「下手糞の上級者への道のりは己が下手さを知りて一歩目」
(参照:スラムダンクより)
何気ないこのシーン。野球界は今でこそ動画を使った指導も珍しくありませんが、連載していた1990年代前半では珍しいことだったと思います。動画を撮影することで客観的に自分のプレーを観ることができます。指導者に色々言葉だけでいわれるよりもこの方が自分のフォームを客観視することができ、自分の下手さを素直に認めるきっかけとなります。そこが上達のためのスタート地点です。
的確なマンツーマンレッスン
次に行ったのはマンツーマンでのシュートフォームのアドバイス。右腕の角度や下半身からの力の伝え方など具体的なアドバイスをこのタイミングで初めて桜木に送ります。
(参照:アニメ版スラムダンク)
もし、このフォームアドバイスを最初に行なっていたらどうでしょうか?おそらくですがプライドの高い桜木は聞く耳を持たなかったのではないでしょうか?
県大会を終え、客観的データが揃い、シュート対決に敗れ、動画を観たことで初めて自分の現在地が明確になりアドバイスに素直に耳を傾けられたのだと思います。そして何よりインターハイで周囲を驚かせたいというモチベーションが非常に高かったと思います。
安西先生は元全日本の選手ということで、時より自らジャンプシュートを放ち見本を桜木にみせます。そのフォームを観察しアドバイスを受けた桜木はついにジャンプシュートが決まり始め、2万本達成に向けた特訓がようやくスタートし始めます。
マンツーマンでフォームをチェックすることによって一球一球に対しての指摘が可能で桜木も質問がしやすくなっていることも良い点です。野球でもチーム練習の場合は選手の数に対して指導者の数は足りておらず、1球1スイングに対しての指導は難しいですが、マンツーマンであればそれも可能です。
さらに指導者がある程度実演してプレーを見せてあげられることも良い点です。もちろんこの辺りはプロ野球選手の動画を見せるなどしても良いでしょう。
動画で振り返り成長を実感する
様々な角度からシュートを打ち続け、記録をとっているうちに徐々にシュートの精度が上がっていきます。そうした日々を過ごしているうちに過去の動画を見返してみると合宿初日のフォームの不格好さや徐々に整ってくるフォームに確かな手応えを感じる桜木。
(参照:スラムダンク)
モチベーションを保つ上で最も重要なことは成長を実感することです。ゲームにのめり込んでしまうのもこの成長を実感することが要因にあります。「できなかったステージをクリアできた」「倒せなかった敵を倒せるようになった」「時間をかけてレベルアップし強くなった」こうした成長を実感できるシステムが次の練習へのモチベーションとなりますが、野球の場合こうした成長を実感する機会があまりありません。
定期的にフォームを撮影し、過去のフォームと比べたり、球速やスイングスピードなど客観的データをとり成長を実感させるシステムを取り入れることは間違いなく選手のモチベーションを高めてくれることでしょう。
短期集中
目標を作る上で大切なことは目標達成の期間を設定することです。例えば足が速くなりたいとなった時それが10年後では意味がありません。具体的に目標を設定するのであれば今50m走が8.0秒なら3ヶ月後に7.5秒にするとします。そうすれば3ヶ月で目標を達成するために必要な日々のメニューが出来上がってくるはずです。
このショート合宿では現状の
「ジャンプシュートが入らない」
という状況から
「1週間でシュートが入るようにし、それをインターハイで披露する」
という具体的な目標と期間が決まっています。
そして短期間であるがゆえに1週間でシュート2万本が必要だったのです。これが1年後であったら1週間ごとのノルマは少なくなりますが、モチベーションを長く保つことは難しいので部分的な弱点を補うためには短期集中というスタイルは合っていると思います。
野球に置き換えた場合指導者が最もやってはいけないことは「打てないから毎日素振り1000本」という根拠のない無茶な注文です。ここまでの順序を考えれば、まずやらなければいけないことは
- 打てていないことをデータで示し
- なぜ打てないのかを動画で分析する
- どうすれば打てるようになるか的確なアドバイスを行う
- 成長した姿をイメージさせモチベーションを高める
- 明確な目標設定と達成に向けた努力の道筋を示してあげる
選手の分析を行い弱点を補うためにはこうした短期集中的な個人課題を与えてあげることが重要です。それが結果的にチームのプラスになると思います。
2万本達成と成果披露
ついに2万本シュートを達成した桜木
(参照:スラムダンク)
野球の場合さすがにピッチャーが1週間で2万球を投げることは不可能ですが、ある程度数をこなすことも大切です。もちろん適切な意図を持って数をこなすことが大切なので数をやれば良いと勘違いしないように注意しましょう。
2万本のシュート合宿を終えて自信を身につけた桜木はこうしてインターハイに乗り込んでいき、当初思い描いた通り全国の舞台で周囲を驚かせます。
努力が必ずしも結果に結びつくとは限りません。しかし、適切な努力を重ねれば間違いなく何かしらの結果がついてくるものです。そして結果がついてくると成長を実感することによりさらに練習をするようになっていき成長は加速することでしょう。
指導者として
当初居残り合宿を命じ「オヤジの道楽に付き合っている暇はねぇ」と言われてしまった安西先生ですが、結果として安西先生も桜木が成長していくことに指導者としてのやりがいを感じているというのも良いシーンです。
(参照:スラムダンクより)
ただしあくまでも選手の成長の先に指導者としてのやりがいを見出すことが大切です。自分のやりがいを優先させてしまうと、例えば小学生のうちからハードなトレーニングを積ませてしまい、結果的に全国大会に出場したとしても、ハードなトレーニングにより怪我をさせてしまい中学や高校では活躍ができなかったり、そもそも野球が嫌いになってしまい、野球を辞めてしまったりしては指導者としても気分は悪いでしょう。
安西先生は桜木に対して、とても素晴らしいアプローチを行いましたが、実は若い頃は激しい気性とスパルタ式の指導から「白髪鬼(ホワイトヘアードデビル)」と呼ばれていました。転機となったのはかつての才能ある教え子谷沢の存在でした。スパルタ指導に嫌気がさした谷沢は自由を求めて渡米するも通用せず、自暴自棄になり暴走事故を起こして亡くなってしまうという苦い過去がありました。安西先生もこうした経験があったからこそ選手の個性に合わせた適切な指導ができるようになったのだと思います。
なのであくまで指導者として主役は選手ということを認識しなければなりません。その上で将来高いレベルで活躍をしてくれればそれが指導者として一番の幸せとなるでしょう。
(参照:スラムダンクより)
まとめ
スラムダンクの連載時期は1990年〜1996年。連載終了から25年近く経った今でもその人気は健在ですが、25年たった今の指導現場においてもこのような適切なアプローチができているチームは少ないのではないでしょうか?
・データ分析により弱点を見つける→ジャンプシュート
・弱点を克服した時を想像させる→モチベーションUP
・克服に向けた道筋を示す
→1週間でシュート2万、マンツーマンでフォーム指導
・過程を動画で撮影し分析
→客観的にフォームを観察し成長も感じれてモチベーションUP
・ノルマを達成し実践へ→結果が出てさらなる向上心を駆り立てる
今チームの指導に行き詰まっているもしくはお子さんの成長の手助けをしたいという保護者の方は、ぜひスラムダンクを参考にして練習スタイルを変えてみてはいかがでしょうか?
BASEBALL FUTUREでも体験レッスンではまずフォームを撮影し、そこから動作解析を行なっていき現状を知ってもらうところからがスタートとなります。
また定期的にフォームを撮影し、過去のフォームと比べたり、球速やスイングスピードなど客観的データをとり成長を実感させるシステムをとっています。
レッスン風景↓
https://youtube.com/shorts/nwpcbpDBqNI
さらにマンツーマンレッスンにより、選手1人に対してコーチ1人がつきっきりで指導をするので短期的にも長期的にも成長をサポートすることが可能です。体験レッスンも行っていますので、ぜひ一度BASEBALL FUTUREのレッスンへお越しください!