フライボール革命やバレルゾーンとどう向き合って行くべきか?
こんにちはBASEBALL FUTUREの依田徹平です。
前回までフライボール革命やバレルゾーンの理論やメリットデメリットをお伝えしてきました。
①バレルゾーン基礎知識↓
②メリットデメリット↓
今回は第3弾の完結編です。
フライボール革命やバレルゾーンとどう向き合って行くべきか?
将来ホームラン王を獲得したい選手
打者として選手の価値を高めるためOPSは今後とても重要になってくるでしょう。しかし忘れてはならないのは158km/hの打球速度が必要ということ。その打球速度を実現するためには65kg以上の除脂肪体重が必要と言われています。除脂肪体重とは脂肪を除いた体重のことなので体重と体脂肪率が分かれば容易に計算ができます。
その為,大谷選手のようにMLBでホームランバッターを目指すような選手になるのであれば、体の成長に合わせてフィジカルも鍛え上げていき打球速度に合わせてバレルゾーンの数値を参考に打球角度を24°〜29°付近に徐々に上げていけるようにスイングを調整していくことが近道となるでしょう。
少年野球などではよくゴロを打ちなさいと言われますが、これはゴロを打つことによって相手のミスが生まれやすくなるという側面もありますが、まずは遠回りせずにバットに当てる確率を高める狙いもあると思われます。しかし、そのままゴロを打ち続けるとレベルが上がるにつれて相手の守備のミスも減っていき長打を狙えないスイングが体に染み付いてしまうので将来ホームラン王を目指したい選手は注意が必要です。
ホームラン以外の道を選ぶべき選手
さてフライボール革命を参考にして打率を捨てホームランを狙う選手がいる一方で、フィジカル面がまだ弱く打球角度を上げてフルスイングをしても長打にならず、逆に三振だけが増えていってしまうという選手もいると思います。もしこの選手の足が速い場合、やはりベンチからするとまずは出塁をして欲しいと思うことでしょう。なぜならば出塁をすることで盗塁をしてチャンスを広げられる可能性や投手にプレッシャーをかけられる可能性があるからです。こうした選手の場合、もちろんゴロを狙う必要はありませんが、ある程度角度を低くしミートをしてまずは低いライナーを狙っていくべきでしょう。
そうした取り組みの中で体が急激に成長をしていけば本塁打を打つスタイルに切り替えても良いですし、そのまま出塁を高める方向へ突き進んでも良いと思います。
「そうするとOPSが下がってしまうのではないか?」という意見もあると思いますが、OPSは分かりやすい数値ではありますが絶対的な数字ではないと個人的には思っています。野球は本塁打だけではなく単打から盗塁や走塁技術の差によって十分に他の選手との違いを作り出しチームの得点に貢献することができます。最も分かりやすい例が先ほどもお伝えしたイチロー選手です。イチロー選手は打率は高かったですが実は四死球が少なく、長打も少ないためOPSという指標で評価をすると決して良い選手ではありませんでした(760~890くらい)。しかしそれでも間違いなく安打や走塁でチームに貢献し得点力を向上させていました。
特に一発勝負のトーナメントの場合、イチロー選手のように三振が少なくどんなピッチャーからも安打を狙える選手は貴重です。やはりある程度三振を覚悟して長打を狙いにいくとトーナメントで高いレベルのピッチャーと対戦した時、バットに当たらず試合が終わってしまうということもあるでしょう。特にピッチャーの進化が止まらないといわれている現代において、もしチーム全員がフライボール革命に取り組んでフルスイングかつアッパースイングをしまうと大量得点の試合がある一方、その裏では完全試合やノーヒットノーランが次々に生まれてしまうのではないでしょうか?
やはり一発勝負でチームが打線として機能するためには長打力のある選手も必要ですが出塁ができる選手や普通のヒットが打てる選手も必要だと思います。適材適所という言葉あがあるようにホームランを狙わなくても生きる道はたくさんあるのでその選手がどのような選手を将来目指しているのか?また指導者から見てどのような選手に育ちそうか将来性を推測してスイングを作り上げていくことが大切となるでしょう。
上から叩く意識と上から叩くスイングの違い
さて上記の考察から現段階ではバッティングの基礎となるレベルスイングを行いミートを心がける場合、気をつけなければならないのが「上から叩く意識」と「実際に上から叩くスイング」は別物ということです。
前回ブログでご紹介した、悪いアッパースイングの時は
「上から叩く意識」を入れることで水平なレベルスイングに近くなってくるのでバットが遠回りしている選手は遠回りが改善されミート率が上がることが予想されますが、本当に上から叩いてしまうとゴロもしくは切ったようなポップフライしか上がらないずヒットが生まれづらいので注意が必要です。
下記比較動画をご覧ください。
この動画を見て分かる通り、本当に上から叩いたスイングをしてしまうと、グリップよりもヘッドが高い状態からボールに向かって振り落とす形になります。
しかしそうすると打球はゴロになりやすく飛距離も出なくなってしまうので、水平なレベルスイングを行う場合も一度ヘッドがグリップよりも落ち、そこからヘッドが浮上していく局面でボールを捉えることでヒットが生まれやすくなるということを認識しておきましょう。
少し話がそれますが速い球に差し込まれてヘッドを落とす局面でボールがバットに当たってしまうと、ボテボテのゴロになるので速い球に対しては前で捉える意識が必要となります。
ですが、前で捉える意識が強すぎると今度は変化球など緩急への対応が難しくなります。そこでバッターとしてはなるべく早い段階でヘッドをグリップよりも落としていきヘッドが浮上する局面を長くとるための動作を身につけることが重要となるので反復練習を行いましょう。
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この先野球界が危惧すべき重大な問題
このフライボール革命の台頭により「勝てる野球」というものが変わってきました。またピッチャーの球速や配球も年々進化しておりフライボールと合わせて本塁打と三振が増えたのですが、そうなってくると野球はボールが当たればホームランそれ以外は三振という競技になってしまいます。それが面白いという人もいるかもしれませんが、少し想像をしてみてください。全て三振かホームランということは源田選手や菊池選手の華麗なプレー、アライバコンビのような見事なコンビネーション、イチロー選手のようなレーザービーム甲斐キャノンと俊足選手との戦いが今後生まれなくなるということです。もちろん全くなくなるということはあり得ませんが、この傾向が進めば三振かホームラン以外のプレーが減っていくことは間違いありません。実際MLBではこの現象により野球がつまらなくなったと言われています。私もこの2022年MLBのオールスターをテレビで観て感じたことですが、両チーム合わせて22個の三振、両チームの総得点5点のうち4点はホームランという試合にメジャーらしさを感じましたが、ワクワクする試合ではなかったなと感じました。
確かにホームランも三振も美しく興奮するものですが、私は2009年のWBC決勝戦のイチロー選手の試合を決めたセンター前タイムリーヒットも好きでした。また高校野球の甲子園での戦いを見ているとプレーはプロ野球に比べて未熟ながらも心を奪われるものがあることは言うまでもありません。
確かに勝つためには進化を受け入れることが必要だと思いますが、正解がなく未完成で未熟なまま手探りでそれぞれのチームが正解を探しながら独自のスタイルを貫き戦っている方が野球としての魅力は高いのかなと個人的には思います。