フライ・タッチアップにまつわる複雑なルール
こんにちは
BASEBALLFUTUREの
依田徹平です。
まずは普通のタッチアップを理解
野球のルールの中で初心者と初級者の境目となるものの一つに「タッチアップ」というものがあります。
簡単にタッチアップを説明すると
ランナーが0アウトもしくは1アウトの時、フライが上がった場合次の塁に進むためにはフライを捕球した後、一度今いるベースに戻る(リタッチする)必要があり、その後に進塁を試みることを指します。
例えば無死3塁の時に
センターにフライが上がる
ランナーはホームにはまだ進めないので一度3塁ベースに戻る
センターが捕球した瞬間にホームに向かってスタート
センターがホームに送球をしてボールを捕球したキャッチャーにタッチされる前にホームベースを踏めばタッチアップが成功しホームインが認められる
ただし、
センターのフライ捕球よりも早く3塁ベースから離れてスタートを切った場合
守備側は3塁ベースにボールを持った状態で触れて審判にアピールをすることでタッチアップをしたランナーをアウトにすることができます。
タッチアップがなければ滞空時間の長いフライが上がっている間にランナーがホームに帰ることができてしまうのでゲームが崩れないためにもなくてはならないルールです。
ちなみにタッチアップは3塁から本塁へ行い成功した場合、バッターの結果は犠牲フライとなり犠打扱いなので打率が下がることはありませんが1塁から2塁、2塁から3塁へタッチアップを成功させた場合は犠牲フライ扱いとはならず打率が下がります。
ミスが生まれるケース
ここまでは野球を始めたばかりは分からないルールかもしれませんが、一度失敗をすればすぐに理解できるルールでしょう。しかしこのフライやタッチアップに関わる初歩的ともいえるルールをレベルの高い高校野球やプロ野球の世界でも勘違いしてしまうことがあるのです。実際にあったケースを交えて紹介していきます。
1.ハーフウェイで次のベースを踏み越えた場合の帰塁
一つ目はフライが上がった時にランナーが次の塁を踏み越えた後にリタッチを行うケースです。
例えばランナーが一塁の時、外野に深く高いフライが上がったとします。
この時考えられる選択肢は以下の3つ
①ハーフウェイ
フライが捕られる可能性が高いが落とした時に備えて1.2塁間で打球の結果を待つハーフウェイ
→フライが落ちたら2塁や3塁を狙う、捕られたら1塁へ急いで帰塁
②スタート
フライが捕られないと判断してスタートを切る
→2塁から3塁そして本塁を一気に狙う、事前に外野の守備位置を見ておくとスタートが切りやすい
③タッチアップ
セオリーは①だが外野手の捕球体勢を見ると捕球される可能性が高いので帰塁をしてタッチアップを狙う
→スタートを切って無理そうなら戻っても良い、打球が深い場合、足の速い選手は挑戦すべきだが学童野球などそもそもフライを捕る確率が低い場合は①で良い
③のタッチアップも珍しいケースですが、さらに珍しいケースとして例えばフライでスタートを切ったものの2塁ベースを回ったところで外野手がフライを捕球してしまい急いで1塁へ戻らなければいけない時があります。この時1塁はフォースプレーになるので急いで戻る必要があるのですが、仮に送球よりも早く1塁に戻ることができていてもあることを忘れているとアウトを取られてしまうことがあります。それは一体なんでしょう。
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正解は一度踏み越えた2塁ベースをもう一度踏み直して1塁へ帰塁をすることです。これをしなければアピールプレーによりランナーはアウトになってしまうので気をつけましょう。レアなケースですが実際にプロ野球でも高校野球でも起こっているプレーです。守備側としても見逃さない集中力が問われます。
先日行われた東海大相模高校対横浜高校の神奈川県決勝戦でも勝敗を分ける大きなプレーとなりました。
まずは走者もサヨナラの場面ということで飛び出してしまいました。さらにライトも慌てる必要がないところ状況が状況だけに暴投を投げてしまいました。しかしそこで冷静に見れる選手もしくはベンチの誰かが一人でもいればランナーをアウトにすることができました。
この場面は振り返ってみると気が付くプレーですが実際にその場でプレーをしていたらどうでしょうか?私もこの緊張状態では気づく自信がないかもしれません。しかしこのプレーで負けることとなった東海大相模の選手たちは2度とこのミスで負けることはないでしょう。私たちもそういった気持ちでこのプレーを見てあげると今後に役立つでしょう。
2. 1アウト1・3塁での帰塁をしないタッチアップ?
1死1・3塁の場面で1塁ランナーとバッターにエンドランのサインが出ていた時、1塁ランナーは深い外野フライが上がらない限りはライナー性の打球が飛んでも基本的には1塁へ帰塁は行いません。なぜならばその状況から1塁へ戻っても間に合わないので打球が抜ける可能性にかけて進み続ける方が得策だからです。そして捕球が完全に確認された段階でようやく1塁を目指して帰塁を始めますが、例えばショートライナーの場合はかなり守備側に余裕があるのでゆっくりとした送球を1塁手へ行うことでしょう。これで3アウトとなるのでチェンジとなるはずですが、この場面で3アウトを取ったはずなのに得点が入るというケースがありました。
結論からいうと3塁ランナーが1塁ランナーがアウトになる前にホームインをしたから得点が認められたのです。しかし普通に考えるとショートが捕球をしてから一塁に投げるタイムと3塁ランナーがショートが捕球をしてからタッチアップでホームインするタイムは圧倒的に送球の方が速いので間に合いません。
ではどのようにして先にホームインをしたのかというと3塁ランナーは3塁ベースに戻らずにそのままホームへ向かったからです。つまりショートライナーが飛んだ瞬間にあえてセオリーのライナーバックをせずにそのままホームへ突っ込んでいったのです。
ではなぜしっかりとタッチアップができていないのに得点が認められたのか?その理由は
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理由は「相手からのアピールプレーがなかったから」です。
通常のタッチアップでも少しスタートが早かったと判断をすればアピールプレーを行いそれが審判に認められればランナーをアウトにすることができます。しかしアピールプレーをしなければアウトにすることはできず、得点が認められてしまいます。つまり上記のケースもアピールプレーをしていれば得点をとられることはなかったのです。
ここで野球を理解している方であればいくつか疑問が残ると思います。まず3塁ランナーはなぜセオリーのライナーバックをせず、リスクのある本塁突入を選んだのかということ。これは難しい判断ですが、ショートがそのまま3塁に送球する素振りを見せれば戻る必要がありますが、どうしてもエンドランでスタートを切っている1塁ランナーの方に目がいってしまい余裕もあるのでそちらに投げてしまいます。また本塁突入を狙うことで3塁ランナー自身がアウトになってしまう可能性も高まりますが、どちらにしろ1塁ランナーはアウトになってしまうので一か八か本塁を狙うのが妥当な判断となるのです。もちろんあまりに早いスタートを切りすぎるとショートも冷静に3塁へ送球をしてしまうので3塁よりも1塁に投げたくなるような距離感で我慢をして送球モーションに入ったら全力でホームを狙うという駆け引きも求められます。3塁へ戻る意識が強すぎるとせっかく一塁へ送球をしてくれてもホームインが間に合わないので3塁ランナーの動きはとても難しいです。
そしてもう一つ疑問に残るのは守備側が3つ目のアウトを1塁で取ってしまった場合、得点を防ぐことはできないのかということです。この場合守備側はダグアウトに戻ってしまうとどうすることもできませんが、ボールを持って3塁ベースに触れて審判に3つ目のアウトを3塁ランナーに置き換えてもらうことをアピールすれば1塁ランナーのアウトは取り消されて3塁ランナーが3アウト目となるので得点を防ぐことができるのです。
まとめ
プロ野球でも甲子園でも起こるうるケースです。フライやタッチアップの基本的な走塁は分かっていても複雑なケースになるとプロでも分からないルールがあります。走者だけでなく守備側としても知っていると知っていないでは大きな差が出てしまうので頭に入れておきましょう。