野球の練習はなぜこんなに走るのか?〜指導者の自己満足?〜
こんにちは
BASEBALLFUTUREの
依田徹平です。
野球の練習をみていると、とにかくよく走るチームが多いと思います。私も現役時代に「なんで野球部は試合ではあまり走らないのに練習であんなに走っているの?」と聞かれた記憶があります。その時は特に疑問に感じていませんでしたが、確かにサッカーやバスケ、テニスなどに比べると野球は試合で走る量はとても少なく止まっている時間の方が多いくらいです。
ではなぜあんなに野球選手は走らされているのでしょうか?理由は以下の3つが考えられます。
・運動能力を高めるため
・心肺機能を高めるため
・指導者の自己満足
運動能力を高めるため
まず1つ目は運動能力を高めるため。野球を始めるにあたり基本的な運動能力は欠かせません。特に小さい頃はまだまだ運動神経も発達しきっていないので、全身を使って走ることで神経が刺激され運動能力の向上につながります。走ることは運動の基本でもあるので小さい頃にある程度走れるように負荷をかけることは必要となってくでしょう。ですがやればやるほど上がるというわけでなく、運動神経全体の一部分が少し上昇するというくらいだと思います。
ある程度運動神経が高まった年齢になった場合はこの目的で走る必要はないでしょう。
心肺機能を高めるため
2つ目は心肺機能を高めて怪我や熱中症などを防ぐため。心肺機能とは簡単にいうと運動をするためのエネルギーを供給する機能です。激しい運動をすると呼吸が苦しくなりますが、あれは消費されたエネルギーを補給するため呼吸により酸素を取り込みそれを心臓から血液に乗せて体全身に行き渡らせているからです。激しい運動で心拍数が高くなるのは不足しているエネルギーを急いで補給しようとしているからです。
この時心肺機能が高い選手は一度に多くの酸素を全身に送り込んだり、効率よくエネルギーを使うことができるのである程度の運動であればそこまで心拍数が高くならないので息が切れづらいのです。これがいわゆる体力がある人とない人の差ということになります。
ですが冒頭に述べた通り野球の試合に体力は必要がないように感じます。そのため「本当にランニングは必要なのか?」といった議論が巻き起こるのですが、私は野球選手もある程度の心肺機能は必要だと考えています。なぜならば心肺機能が高い選手は疲労による怪我のリスクを下げることができるからです。例えば心肺機能が低いA選手と心肺機能が高いB選手で同じ練習をした場合を比較してみましょう。A選手はB選手と比較すると体力がないので練習が長くキツくなるほど練習についていくことができません。またついていけないだけではなく疲労が溜まっていくので体が回復をする前に次の日の練習になってしまい結果的にオーバーワークとなり怪我をしてしまうのです。
ですがB選手はその間も練習についていくことができ、さらに1日休めば体も回復するのでどんどん成長をしていくことができるのです。
このように心肺機能は直接的に試合のパフォーマンスには影響しづらいですが、練習量の多い野球をする上では自分の体を守る為にもある程度の心肺機能は必要となってくるのです。
指導者の自己満足
走らせる理由の中で最も多く最も避けなければいけないものがこの「指導者の自己満足」で走らせているという状況です。これは選手に厳しい練習を課すことで今日も良い練習をすることができたと勘違いをしてしまうことです。こうした書き方をすると反感を買うかもしれませんが、そうした方にこそ是非最後まで読んでいただき考えるきっかけにしてほしいと思います。まず大前提として先程もお伝えした通り心肺機能を高めるためにはある程度のランニングは必要です。ですが走るだけでは技術は身に付きませんし試合には勝てません。もしたくさん走ることで試合に勝てるのであれば野球選手はマラソン選手に負けてしまいます。
それにもかかわらず指導者が厳しく長時間のランメニューを選手に課すのはおそらく教えられる技術や練習のバリエーションが少ないからだと断言できます。キャッチボール、ノック、バッティング、ピッチング、走塁。基本的なこの5つの項目の一つ一つに習得しなければならない技術が山のようにあります。一から教えていけば3年間などあっという間に過ぎてしまうでしょう。その為貴重な練習時間を平気で1時間,2時間ランニングメニューで潰してしまうのは勿体無いとしか言いようがありません。
しかしそもそも伝えるべき技術や戦術が指導者の頭の中になければ練習メニューは淡々とこなされていくので時間が余ってしまいます。そして指導者が消化不良を起こしてしまうのです。この持て余した時間と指導者の消化不良が合わさり無意味なランニングメニューが誕生します。持て余した時間を使ってきついランニングメニューを作り、選手の疲れた表情を見て満足をする指導者と疲労と技術が身につかないことで不満がたまる選手。この構図は野球経験者であれば多くの方が体験したことがあるのではないでしょうか?
正しいランニングメニュー
何度も言いますが、私はある程度のランニングメニューは必要派です。ではそのある程度がどれくらいかというと週に2~3回程度10~20分息が切れるくらいのメニューです(通常のアップよりはきつく)。負荷が足りなくなってくればタイム設定をしてスピードを速くしたり、時間や日数を伸ばすこともありだと思いますがやり過ぎてしまうと逆に怪我をさせてしまったり、だらだら走らせることで逆に筋力(速筋)が落ちたりするので注意が必要です。
ランニングメニューの中にはポール間走や短ダッシュなどのスプリント系のメニューもあります。こちらはしっかりと走るフォームをよくするため、瞬発力を鍛えるためといった明確な目的を持って適度な量行うと効果的です。
その他にも
・体のバランスを整えるため
・疲労を軽減するためのダウン走
・体幹への意識を高めるため
など明確な理由と効果を持ったランニングメニューはあって然るべきです。
実際にオフシーズンに自主トレを一緒に行った横浜DeNAベイスターズの三嶋投手は自らの考えでスローペースではありますが、1時間ほどランニングを行っていました。つまり大切なのはなんの為に走るのかを明確にすることです。年代やポジション、選手個々の特徴によってはそれが合う人も合わない人もいます。
最も行ってはいけないメニューは意味もなくただ長距離を永遠と走らせることです。よく下半身を鍛えるためと言いますが、これでは逆に筋力は低下しますし体重も落ち、無意味に体力を消耗させて怪我を引き起こしやすくしているだけです。
下半身を鍛える目的であればもっと時間を使わずに有効な方法がいくらでもあるのでそちらを実践するようにしましょう。
長い練習時間の中で体力をセーブしてしまう
そもそも野球の練習時間はとても長いです。あなたも「このあとキツイランニングメニューがある」「このあとどんなキツイメニューが待っているのか?」と憂鬱になったことはありませんか?
私もこういった経験はありますが、このような考えが頭にあると無意識に体力をセーブして練習に臨んでしまいます。例えば守備練習であっても走塁練習であっても試合を想定した練習メニューでさえ全力で行わずにた、だこなすだけの練習になってしまうのです。これでは技術の向上は見込めませんし、緊迫した公式戦でミスが出てしまうことでしょう。
浮いた時間で技術練習
今までランニングに取られていた時間を有効活用して細かい技術練習をしましょう。バッティングであれば構えから軸足への乗り方テイクバック、振り出しインパクト、守備であればキャッチボールの基礎からゴロの捕球姿勢、ステップ、フライ、送球、連携プレーなどたくさんの項目がありますし、選手個々に目を向ければ伝えなければいけないことはたくさんあります。
練習場所がないから仕方なくランニングをさせているというチームもあるかもしれません。しかし少しのスペースがあれば技術練習はできるので適度なランメニューを終えた後はぜひ技術練習をしてみてください。
走ることで課題はそこまで生まれませんが、技術練習には課題がたくさん生まれます。課題が生まれれば選手もその課題を克服しようと努力をしたいと思うはずなので浮いた時間で課題練習の時間でも与えてみてはいかがでしょうか?
細かい技術指導が苦手であったり、変な技術を教えたくないというのであればプロ野球選手のプレーを編集して選手に見せてあげてください。それを真似するだけでも非常に効果的な練習を行えるはずです。
たくさん走らせないと不安という指導者の方もいるかもしれませんが、中途半端に時間を減らすのではなくぜひこの機会に勇気を持って劇的に練習メニューを変えてみてはいかがでしょうか?
技術面の参考動画はこちらから↓