高校生のコメント力と将来性
こんにちは
BASEBALLFUTUREの
依田徹平です。
高校生のインタビュー
高校野球は東北勢悲願の初優勝を成し遂げた仙台育英高校の優勝で幕を閉じました。優勝候補筆頭であった大阪桐蔭を破った準優勝下関国際の活躍も全国に多くのファンを作ったことでしょう。さて甲子園では毎年注目選手や主将などが各種メディアにインタビューを受けコメントを残していますが、とても立派なコメントを残してその対応力に感心させられます。しかし、これは甲子園という舞台でチームの代表としてある程度自制心が働いた状況で受け応えをしているからこそのコメントであり、本心や個性を知るには不十分であると思います。その選手の本心やパーソナルな面を引き出すにはある程度リラックスした状況で話をしなければならないので、一番それをよく分かっているのは保護者やチームメイトではないかと思います。監督、コーチも長く付き合いがあるとは思いますが、選手も緊張感はあると思うので余程選手との距離が近い指導者でないと本当の性格は分かっていないかもしれません。実際、監督の前だけ良い顔をしてチームメイトに対してはやりたい放題という選手をたくさんみてきました。
ドラフト後のインタビュー
こうした「選手のパーソナリティ」は現段階での技術力以上に今後の活躍に影響を及ぼすと私は考えています。どんなに甲子園で活躍をしていてもどんなにプロ入り前に騒がれていてもパーソナリティに問題があればプロではなかなか活躍が難しいです。
さて、では注目選手の本心やパーソナリティをどのような時に私が判断しているかというと、それは緊張感が抜けある程度リラックスした状況のコメントです。具体的にはドラフト会議後のインタビューやコメントです。もっというとドラフト直後はまだ緊張感があり、堅いコメントをしてしまいますが数日経ってプロ野球選手になれたという実感が湧き緊張が解け始めた時のコメントや新人合同自主トレやキャンプが始まった頃のコメントです。
この時のコメントを聞いていると高校野球の時のインタビューに比べ、リラックスしておりパーソナリティが分かりやすくなっています。この時にどのような内容を語るのか?に注目をしてみてください。すると今後活躍するかどうかがみえてきます。
ビッグマウスや模範解答
明らかに浮ついたコメントや身の丈に合わない活躍を宣言するビッグマウス、更には模範解答的なコメントをしてしまう選手は活躍しないもしくは活躍に時間がかかってしまう傾向にあります。ビックマウスが嫌いというわけではありませんが、根拠のない薄っぺらなビックマウスは目に余ります。本当に活躍する選手がビックマウスになる時はそのビジョンやプロセスをしっかりと語った上で高い目標が結果としてついてくるというニュアンスで目標を語ります。なのでその語る表情や雰囲気からはプロになったことに満足をしていない、これからが勝負だと常に緊張感を漂わせており、言葉以上に伝わるものがあります。
またメディアに言わされているようなコメントを残してしまう選手も大活躍はしていない印象です。例えば入団会見などで明らかに選手を誘導するような質問をしてそれを察した優しい選手は「新人王が目標です」「160km/h出します」「〇〇さんの記録を超えます」といった模範的解答なコメントをしてしまいます。もちろんそれが悪いという訳ではないです。しかし個人的な印象として質問に対して即答するのではなくじっくりと間を空け自分の考えをまとめてから自分の言葉でコメントをしたり、時にはメディアが欲しがっているコメントをあえて避けたりするようなコメント力がある選手の方が後々大成する傾向にあると思っています。
コメント力=選手力の思考力=将来への期待度
イチロー選手やダルビッシュ選手、大谷翔平選手のインタビューは聞いていてとても面白いです。ここでいう「面白い」というのはバラエティ的な面白さではなく、野球に対する考え方やプレーについてしっかりと言語化して説明をしてくれる面白さです。聞いていると「そんなことを考えてプレーしているのか」「そんな視点では考えたことがなかった」と感心させられます。最近では佐々木朗希投手のルーキーイヤーのコメントもどのようなことを話すのかとチェックしていましたが、浮ついた様子もなく、落ち着いて自分の言葉で語っているなと感じ勝手に安心をしていました。
個人名は避けますがプレー以外の私生活や高級車を買ったなどが話題に上がってしまったり、模範解答しかできない選手はあまり大活躍しない印象がありますが、そうした選手も活躍できるようになった年に久々にコメントを聴くと物凄く落ち着いて深いコメントをしており、その変化に驚かされることもあります。もちろんデータなどはありませんが、こうして考えると選手としての活躍とコメント力はある程度比例すると思っています。
ではなぜコメント力が素晴らしい選手とそうでない選手とで分かれてしまうのでしょうか?それはおそらく浮ついたコメントや模範解答をしてしまう選手はまだ自分のプレーを自分で言語化し語れるほど極められておらず、持って生まれたセンスや身体能力だけで野球を行っているのだと思います。感覚で野球をしているので当然プレーやプロで活躍する自信について深いコメントを残すことはできません。その結果、模範解答やビッグマウスを発してしまうのだと思います。(あくまで推測です)
そこから脱却し活躍できるようになった背景には必ず何かきっかけがあるはずです。コーチとの二人三脚、あるプロ野球選手との自主トレや助言、自分で行った試行錯誤の数々。そこで自分なりの野球に対する考えが構築されるので改めてインタビューを受けた時、私たちが面白いと感じるコメントや参考になる考えが聴けるのでしょう。
逆に言えば、プロ入り前の高校生や大学生のうちから聴いていて面白いコメントができる選手はそうした試行錯誤を小さい頃からずっと行ってきているということになります。そうした選手がプロに入り後、早々に活躍をするのは必然と言えるかもしれません。
まとめ
小学生や中学生でも自分のプレーについて色々と深く考えられる選手がいます。そうした選手はプレーについて話をさせてみると次々と言葉が出てきます。逆に自分のプレーについてあまり話ができない選手はまだまだ感覚に頼ってしまっている傾向にあります。
昨年ヤクルトスワローズジュニアの練習を見学させていただいた時
選手に今後の展望を聴いていると、大半の選手が「プロになりたい」で終わるところ、ジュニアの選手たちは「〇〇シニア・ボーイズに入って〇〇高校に入り甲子園に出てプロに行くのが目標です」など小学6年生にして将来のプランをしっかりと考えていることに驚かされました。
また動画を撮影していると初対面にも関わらず「今のフォーム見せてもらえますか?」と話しかけてくる貪欲さには感心させられ強豪校の高校生と話しているような錯覚に陥りました。ジュニアに入った選手が全てプロに行くわけでもコメント力が高い選手が全て活躍する訳でもありませんが、可能性という面では他の選手に比べて高いと思います。
思考力はコメント力にも繋がりプレーにもつながるので試しに自分のバッティングや守備、ピッチングについての考えをまとめてみてはいかがでしょうか?