VAA(Vertical Approach Angle)とは?
こんにちは
BASEBALL FUTUREの依田徹平です。
VAAという数値をご存知でしょうか?
VAAとはVertical Approach Angleの略で
その意味は簡単にいうと
ピッチャーが投げた投球がホームベースを通過する際の角度のことです。
例えば高いリリースポイントから低めに投げれば角度はマイナス
高めから高めに投げれば0度
低めから高めに投げればプラスの数値となります。
このVAAが現在メジャーでとても注目を集めています。
なぜかとうとこの数値が0度つまり水平な軌道であればあるほど
空振りやフライなどに打ち取りやすいというデータが出ているからです。
なぜ打ち取りやすいのか?
ではなぜこのVAAが優れていると空振りを取りやすいのかを考えてみましょう。
ここ数年の打者のトレンドとして「フライボール革命」や「バレルゾーン」といったものがあります。
これは25度〜31度くらいの角度に160km/h以上の打球を飛ばすことでホームランや長打を生み出しやすくしOPSを高めるといったもので実際ここ数年でホームラン数は増加傾向にあります。
打球に角度をつけるためにはバットを下から上に出しボールの中心からやや下を打つ必要がありますが、このバット軌道への対抗策として投手側のトレンドとなっているのが高めのストレートです。その理由は極端に下から上へスイングするバット軌道では高めに投げ込まれたボールの軌道にスイング軌道を入れることが難しいからです。
高めにボールを投げることでボールの角度は水平に近くなります。つまり、VAAが0度に近い程バッターはボールの伸びを感じやすく空振りを取りやすいというのがVAAが評価されている仕組みです。
ラプソードの見方が変わる
さてボールの伸びというと近年はラプソードなどの普及によりボールの変化量が可視化されたことで回転数を増やし、回転効率を高めていくことで空振りが取りやすくなると考えられていました。しかし、このVAAという指標をもとに打者の結果を分析したところ回転数や回転効率が決して優れていなくてもVAAが0度に近いボールを投げ込むことができれば伸びを感じ空振りが取りやすいということが分かってきたのです。
VAAを0度に近づけるためには、今まで通りラプソードの測定結果などをもとに回転数を増やし回転効率を高めてホップ量を増やすことでボールを落ちづらくすることは重要です。しかし、回転数や回転効率が低くても角度を水平に近くすることは可能です。
それは低いリリースポイントから高めに投げ込むことです。
今まではサイドスローやは縦の変化量よりも横の変化量の方が多いので高低の勝負より横幅を使った投球で打者を打ち取ることが一般的でしたしかし、サイドスローはオーバースローに比べるとリリースポイントは低いため高めにストレートを投げ込むことでVAAが0度に近くなり空振りが取れる可能性が高くなるのです。
そうした視点で考えるとサイドスローよりもリリースポイントの低いアンダースローの投手例えば牧田選手や渡辺俊介選手が高めの釣り球で勝負をしていたのも頷けるのではないでしょうか?
オーバーやスリークォーターの場合
ではオーバースローやスリークォーターの投手はどのようにVAAを活かせば良いのでしょうか?
サイドスローやアンダースローであればそのリリースポイントの低さから自然とVAAは0度に近づきますしアンダースローの場合は0度を超えてプラスの角度でボールが浮き上がってくるように感じることでしょう。
しかしオーバースローやスリークォーターの場合は極端にリリースポイントを下げることはフォームを大きく変えてしまう可能性があるので難しいです。ですが、フォームを大きく変えずにVAAを0度に近くする方法があります。それはエクステンションを伸ばすことです。
エクステンションとは投手が投げるリリースポイントからプレートまでの距離です。つまりエクステンションが長ければ長いほどリリースポイントが打者に近づくということです。そして重要なことはリリースポイントが打者に近づくだけではなく「低くなる」ということです。
リリースポイントが前になればなるほど、リリースポイントが下がっていくことはシャドーピッチングなどで試してみると分かりやすいと思います。またマウンドの傾斜が低いところで投げられることもリリースポイントが低くなる要因とも言えるでしょう。
実施メジャーでも1年前に比べて打ち込まれやすくなった選手を調べるとリリースポイントが高くなっていたことが分かり、調べていくとエクステンションも無意識のうちに狭くなっていたことが判明したということがありました。この選手はエクステンションを1年前と同じようにすることで結果的にリリースポイントが低く改善され打ち込まれることが減ったそうです。
まとめ
VAAという新たな指標が生まれたことでボールのホップ量だけではなく高めでも勝負ができることが分かりました。
これにより身長が低い投手やスリークォーター気味の選手の配球が少し変わってくるかもしれません。
しかし注意をしなければいけないことはこれはあくまでもメジャーでのデータということです。上から叩く意識が根強い日本の野球の場合はもしかしたらメジャー程の効果はないかもしれません。
とはいえ無視できないデータであることは間違いないのでストレートの質を高めたいという選手はまずはエクステンションを少し広げ高めに投げ込み打者の反応を調べてみるのも良いかもしれません。