新ルール? ブロッキングベースとは?
こんにちは。
BASEBALL FUTUREの小見野剛です。
2023年8月にあったDeNAベイスターズ京田選手のタッチプレーを契機として「ブロッキングベース」という新たな判断基準が適応されることとなりました。
wikipediaより引用↓
日本プロ野球の試合にて2023年9月5日より適用される判定基準である。
野球の試合で、明らかにセーフの場合で、ボールがそれるなどして野手が結果として不可抗力でベースを塞いでしまった場合はセーフとなるルールで、走者側の不利益を取り除く観点から制定された。また、けん制での帰塁時に送球がそれたことによって野手がベースをふさいだ場合は新ルールを適用してアウトとはせず、走者として残ることができると説明した。なお、森健次郎審判長は「規則を変えるのではなく、運用を変える」と発言している。
上記の通り、規則(ルール)を変えるわけではなく運用や判断基準をある程度統一するのが今回の改正です。
事の発端は2023年8月18日DeNA対阪神。1点リードを許している阪神最終回の攻撃、一塁走者の熊谷選手が盗塁を試みて判定はセーフ。しかしDeNA側がリクエストしアウトに覆りました。
この判定を不服とした阪神岡田監督が猛抗議をします。その内容は、京田選手が足でブロックをするような形で2塁ベースを完全に隠してしまったためランナーがベースタッチ出来なかった、というものです。
判定は覆らなかったものの、京田選手がベースを隠すようにベースカバーに入ってしまったため走者との接触プレーになってしまい、怪我をしてもおかしくない状況だったことはその後のルール改正への後押しの一因になったでしょう。このプレーが許されるのであれば、大事な場面で危険を犯して同様のプレーをする選手が出てくるかもしれない訳ですから。
今までコリジョンルール適用は本塁のみ
ランナーの走路をふさぐことは本塁上では禁止(走塁妨害が適用される)されておりコリジョン(衝突)ルールと呼ばれています。このルールが日本プロ野球で採用されたのはメジャーリーグの2年遅れの2016年です。
コリジョンルールが採用される経緯は、やはり怪我をするキャッチャーが後を絶たなかったことに由来します。特に阪神タイガースに在籍していたマートン選手は本塁上でのキャッチャーへのタックルが度々物議をかもす選手でした。
いずれもヤクルト戦で
・2013年5月12日
田中雅捕手が鎖骨骨折
・2013年9月14日
相川捕手に対してタックルしプレー後の小競り合いの末両者退場
・2015年5月13日
西田捕手に対するタックルから乱闘寸前に
当時ヤクルトの真中監督が問題提起しルール導入に至りました。
以後、キャッチャーはブロック技術を磨くのではなく、タッチ技術を高めることに従事するようになり、プレー中の怪我も激減しました。
本塁とその他の塁との大きな差は点が入るか入らないかと防具をしているかいないかです。2塁に進まれても3塁に進まれても本塁さえ踏ませなければ得点は入りません。そのため本塁に比べると危険を犯して捨て身のプレーを行うことはさほど多くないためコリジョンルールの適用範囲から除かれたと思われます。
では実際、本塁以外のベース上ではどんなことが起こってきたでしょうか?私が思い出すのは西岡選手です。当時日本人トップレベルの内野手としてメジャー挑戦をした西岡選手(当時ミネソタ・ツインズ)は2011年4月7日、2塁ベース上でダブルプレーを阻止を狙う相手選手のスライディングを受け骨折をしてしまいます。今では禁止されている危険行為ですが、現地メディアは「動きがメジャーレベルにない」などむしろ西岡選手に対して批判的な意見も出ていたと記憶しています。今回のプレーとはやや質が異なりますが、やはり選手同士の接触に危険が伴うことは明白なのです。
今後は新ルール「ブロッキングベース」が適用される
阪神はセ・リーグに対して意見書を提出。2023年9月4日に実行委員会で話し合われ、翌5日から新ルールを運用開始となりました。「ブロッキングベース」という名称で運用され、タイミング的にセーフなのにベースタッチ出来ずにアウトとなった場合、セーフとして試合再開する、という内容になります。野手が故意にブロックしたかどうかは問いません。ちなみに、牽制球がそれたことによって野手が体勢を崩し帰塁の際にブロッキングベースが発生した場合は、ランナーはアウトにはならず走者として残ることができます。
タッチプレーの立ち位置
結果として、走者はアウト、盗塁は失敗となったので京田選手は当時であればチームにとっては良いプレーをしたということになります。しかし、今後同じプレーをすればブロッキングベースが適用されセーフとなってしまいます。本塁でのコリジョンルールと同様にベースの一角を空ける必要があるのです。また、もし熊谷選手のスパイクが京田選手の腿などに入っていたらどうでしょうか?京田選手が大怪我をしていたかもしれません。自分の身を守る意味でも基本的なベースへの入り方を抑えておきましょう。
キャッチャーからの送球がどのようにそれるか分からないため遊撃手の場合、基本はベースの前でボールキャッチします。これによりランナーとの交錯を避けつつ、スムーズなタッチがしやすくなります。今回のプレーはキャッチャーの送球が1塁側にワンバウンドでそれたため、京田選手もこの形でキャッチしていましたがバランスを崩して左膝をつき、その結果ベースを塞ぐような形になってしまったように見えます。
制度やルールに合わせてプレーも変わる
ちなみに今まで基本とされていたベースをまたぐように構える待ち方は最近減ってきています。ベース前に立つようになった理由としては単純にその方がタッチが速く手前でバウンドしそうなボールをカバーしやすいこととランナーとの激突を回避するためです。さらに言えばボールが1塁側に逸れた時、審判に分かりやすく足にタッチしにいくと追いタッチになってしまいますが、最短距離の胴体や背中にタッチすれば審判からは見づらいですがリクエストにより覆ることが多くなったからだと思います。
タッチの際のグラブの使い方
もう一つ大切なことは、グラブを上から下に使うことです。ゴロやショートバウンドを捕球する時はグラブを下から上に使うのが基本ですが、ショートバウンドを下からすくい上げて捕ったが為に、走者の足が先に入ってしまったということはよくあることです。タッチをしたい位置の真上でグラブを構えておいて捕球と同時に下に落とす準備をしておきましょう。盗塁をアウトにするのは100分の1秒を争う勝負です。少し前に出ればノーバウンドで捕れる送球であっても我慢して、ボールがグラブに入ることを信じて思い切ってハンドリング勝負してみましょう。もちろん明らかにタイミングがセーフの時や、捕球さえ出来ればアウトだと思ったら捕ること・止めることを優先しましょう。(タッチの勝負のためには外野のカバーも重要です)
本来、シンプルに「送球と走者の足のどちらが早いかのスピード勝負」が醍醐味であるべきであって「塁上の格闘技」が見どころであるべきではありません。これからも子供から年配の方まで幅広い世代で野球が愛され続けるためにも少しずつ形を変えみんなが安心して楽しむことができるスポーツとして在り続けて欲しいと願っています。