参照:野球データ革命より
重要なデータをまとめてます。
データ
上記はMLB2020年のデータ
当たり前だが奪三振を奪うことができ四死球が少なくホームランも打たれない投手の失点は少ない
それ以外のイベントであるゴロやフライやライナーはチームの守備力やポジショニングによって変化するので単純な投手力を図る上ではほぼアウトになる三振や内野フライがどれだけ多く、四死球やホームランがどれだけ少ないかを分析することが大切
スコアを集計し投手ごとに下記5つのイベントの割合を分析して課題を見つけよう
・ほぼ100%アウトとなる奪三振と内野フライを完全アウトと表現する
・ゴロ (アウト、ヒット問わず)
・外野フライ(アウト、ヒット問わず)
・四死球
・本塁打
空振りを奪う能力と打たれた場合も打球の角度をつけさせないことでゴロに打ち取ることが重要
MLB日本人投手のリスク管理(野球データ革命より)
完全アウト+ゴロアウトが60%を超えていればリスク管理に優れている投手
MLB平均では57.5%
ダルビッシュ投手は64.7%奪三振が多い『奪三振特化型』 ・・・千賀投手や則本投手
前田健太投手は70.6% 三振もゴロも多く『ハイブリット型』 山本由伸投手や菅野投手
ゴロアウトが多い『ゴロ型』・・・メルセデス投手や青柳投手
球速が上がれば空振り割合は増える
140km/hの場合、投手の手からボールが離れて打者に到達するまで0.45秒かかる
打者はスイングすると決めてからインパクトまでどんなに速くても0.26秒かかる
140km/hのボールを打つには残りの0.19秒で球を見極め判断をしなければならない
さらに変化球も見極める必要があるので速い真っ直ぐに合わせていたら緩急に対応できなくなってしまう
つまり速いボールほど打者は見極める時間が短くなるので有効となる
球速が上がることのメリット
・ストライクゾーンもボールゾーンもスイング率が高まる→ボール球にも手を出してくれるようになる
・ストライクゾーンでもボールゾーンでも空振り率が高まる
・ライナー+外野フライの割合が下がり空振りの割合が増えていく
・打球角度が上がらなくなる=長打リスク回避(ただし145km/h以上の方が顕著に現れている)
→差し込まれることでバットがダウンスイングしている時にバットにあたるため角度が出ない
・スライダー(変化球)の空振り割合も増加する
→速いストレートに差し込まれるのを嫌い早めにタイミングを取ろうとするためスライダーに合わなくなる
球質を上げることも大切
ラプソードの計測によりボールの回転数が計測できるようになりいわゆる「キレやノビ」が分かるようになったがホップ成分を高める上ではジャイロ回転をしていない綺麗なボールかつ回転軸を12時に近づけることの方が重要視されている
ホップ成分が50cmを超えていると25%の確率で空振りというデータもある(MLB)
変化球
変化球はストレートとの球速割合が重要
例えば145km/hのストレートに対してスプリットの割合が97%の場合スプリットの球速は140km/h
打者からすると真っ直ぐと球速があまり変わらず少し沈む程度なので真っ直ぐを待っていてもある程度対応できてしまう
スプリットの場合ストレートに対して91%前後の球速が望ましい
145km/hの場合132km/hのスプリットの方が空振りを奪いやすい
このように変化球にはそれぞれ有効となる使い方や球速割合がそれぞれある
→緩急を使うため球速差があれば良いということではない
空振りを取ることを考えるのであればストレートの球速に対して
スライダー90%
チェンジアップ80%後半
高校生はストレートに対して変化球の球速が遅い傾向が強い
特にスライダーは80%前半のことが多い
プロ野球選手のカーブの平均がおよそ80%なので高校生のスライダーとプロのカーブが同じような球速割合になってしまう
140km/hのストレートなら125km/hのスライダーを投げたい
スライダーの球速割合が85%などの場合は曲げることよりも「速さ」を意識してみましょう。
各球種の特徴
フォーシーム
フォーシームの投球割合は
・前田投手 19.4%
・田中投手 23.8%
・ダルビッシュ投手 15.4%
フォーシームの投球割合が低い理由は下記データの通り
打球速度や角度が出やすく飛距離が出てしまうため長打のリスクがあるから
そもそも若いカウントでは打者は真っ直ぐに合わせて振ってくるので真っ直ぐが最もリスクが高いことを知っておく
またフォーシームは以下データの通りツーシームの次に空振り率が低い
空振りをとりゴロを打たせることが失点を防ぐと考えるとフォーシームの価値が下がる。メリットはコントロールがしやすいこととファウルが多いことつまりカウント球としては有効
ただし変化球だけを投げていては変化球にタイミングがあわされてしまうので変化球を活かすためにも速い真っ直ぐを持っていることがとても重要になってくる。高校生の場合変化球の球種が少なかったり、変化球のコントロールが悪いことで必然的にフォーシームの割合が50%以上になってしまうことが多いが、良い真っ直ぐを持っている選手ほどその投球割合を減らして変化球の割合を増やしていくことが失点を防ぐことにつながる
カーブ
カーブの球速
カーブ、パワーカーブ、ナックルカーブ、ドロップなどがあるが
「球速が速ければ空振りが増えて、球速が遅ければ遅いほど見逃しが増える
ただカーブを投げるだけでは練習にはならないどんなカーブをどのような意図で投げたいのかを明確にしておくことが重要
→空振りが欲しければ速いカーブを見逃しが欲しければ遅いカーブを身につける
変化量よりも球速が大切というデータ
近年ナックルカーブを投げる選手が増えている→分類は速いカーブで空振りが狙える
スローカーブ↓若いカウントで見逃しが多い
空振りを奪える速いカーブ↓
カーブのコース投げ分け
・右投VS右打&左投VS左打の場合→アウトローのボールゾーンの空振りが多い
・右投VS左打&左投VS右打の場合→膝元のボールゾーンの空振りが多い
空振りを狙いたければ膝元を攻めたいところだが基本的にはボールゾーンなのでスイング率が低い
→空振りを狙うなら高速カーブが有効
スライダー
曲がりの大きいスライダー
フォーシームとの球速割合は90%が理想
ダルビッシュ投手や大谷投手のような曲がり幅の大きいスライダーを操る投手のスライダーは「ブーメランスライダー」とも呼ばれる
スライダーは対右打者・対左打者によって使い方が変化する
ダルビッシュ投手のデータを見ると左打者に対してのスライダーは見逃しが多く、右打者に対しては空振りが多くなっている
つまり
左バッターに対してはボールゾーンからストライクに入ってくる鋭いスライダーで見逃しを奪い
右バッターに対しては真ん中から外側に逃げていくスライダーで空振りを奪う
というのが定石になる。このように打者ごとに使い方を分けて使うように練習しよう
曲がりの小さいカット気味のスライダー
デグロム投手やバーランダー投手はダルビッシュ投手に比べるとスライダーの曲がりは小さいがその特徴を見ると左打者からも右打者からも空振り割合が見逃し割合よりも多い。その要因としては曲がりの大きいスライダーは右投手の場合左打者のインコースにはコントロールしづらいが、曲がり幅が小さければコントロールしやすいことが考えられる。
ダルビッシュ投手や大谷投手はスライダーではなく曲がりの小さいカットボールを代用することによって左バッターのインコースをせめている
自身のスライダーの特徴をラプソードを使って捉えて、使い方を模索していく
コース別のスイング率と空振り率
右対右、左対左の関係ではカーブ同様に真ん中からアウトコースにかけて逃げていくスライダーを投げることで空振り率が高まる。
右対左、左対右の対角の関係の場合、打者のインコース膝元に食い込んでいくスライダーを投げると空振り率が高まる。
→つまり空振りを奪いたければ打者が右でも左でも同じコースに投げておけば大丈夫
右投手であれば捕手の右膝あたり、左投手であれば捕手の左膝を目掛けて投げるイメージ
良いスライダーがあるのであればいろんなコースに投げ分けるだけではなくこの一点へのコントロールの精度を高めることもおすすめ
もちろん見逃しが欲しい場面では対角の関係の場合ボールゾーンからアウトコースに入ってくるスライダーも重要となる
→空振りが欲しいのか見逃しが欲しいのかをバッテリー間で意思疎通した上で配球を行うことが大事
チェンジアップ
チェンジアップは投げる高さが重要
フォーシームとの球速割合は80%後半が理想
フォーシームとの球速差を活かして打者のタイミングをずらす球種
球種別に見ると打球速度は一番遅く、打球角度も7.7°と長打のリスクも低い球種
チェンジアップは地面から50cmの高さから地面にかけて空振りが多くなっている。体で表すとバッターの膝から地面にかけて
→特に追い込んでからボールゾーンにチェンジアップを投げられるとスイング率も高まり狙って三振を取れるようになる。低めに投げ切る精度を高める必要がある
また打者を左右別に見ると
右対右・左対左の場合は同様に低めに投げることが有効となるが
右対左・左対右の対角の関係の場合は低めだけではなくアウトコースに逃げていくような使い方も空振り率が高まるので有効
もちろん右対右でもインコース低めにも投げていきたいが、対角の関係でない場合シュートがかかりすぎるとデッドボールになる不安から腕が振れず外一辺倒になることで打者に踏み込まれてしまう。こうした場合はチェンジアップではなくフォークを使うなど他の球種で代用することも検討すべき
→有原投手は左打者にはチェンジアップ、右打者にはフォークと投げ分けている。右打者と左打者は別物として球種の使い方を変えるようにしよう。
高低を有効に使うには?
フォーシームは高めに投げることに価値がある
フォーシームは空振りがとりづらくファウルになりやすいというデータを紹介したが、高めに投げた場合空振り率もファウル率も高まる傾向にある逆に低めの方が空振りは取りづらい→高めはバットを加速させる時間・距離が短いため差し込まれやすい
ピッチトンネルを作る上でも高めのフォーシームは有効
ピッチトンネル→https://baseball-future.com/pitching/blog-4-11-2/
簡単に説明すると変化球はできるだけフォーシームと同じ軌道で打者に近い位置で曲がり始めることで打者が真っ直ぐだと錯覚をして空振りを奪いやすくなること
低めのフォーシームでピッチトンネルを作る場合トンネルを通って変化を始めると低めに外れ過ぎてしまいワンバウンドにしかならない
しかし高めのフォーシームを投げておくとその軌道から変化球を落とすことができればゾーンの中で勝負ができるようになる
もちろん低めのフォーシームと低めのボール球の変化球で勝負をする組み立てもありだが見極められてしまうと厳しくなる
球数も増えて長いイニングを投げられなくなる
ピッチトンネルから唯一外れる球種はカーブ
一度浮き上がってから落ちてくる球なのでピッチトンネルは作れないが若いカウントでは打者はフォーシームに合わせてくるので見逃しを取りやすいのでカウント球として有効→追い込まれているバッターは手を出してくるので注意
低めの利点は角度がつかないこと
コース別、球種別の打球速度・角度・飛距離を見ると
・高めよりも低めの方が打球速度が高くなっている→デメリット
・高めよりも低めの方が打球角度が付かない→メリット
・変化球の場合低めに投げるとほとんど角度が付かないので長打のリスクは少ない→メリット
空振りやファウルを奪いたい時は低めではなく高めを狙う→フライボール革命を意識している選手には特に有効
ゴロが欲しい場面では低めに変化球を投げる→困ったらアウトローは変化球の方がその意味合いが強くなる
カウント
以下表にあるように打者有利カウントでは打球速度も打球角度も上がりやすく長打のリスクが高い
逆に投手有利のカウントほど打球速度も打球角度も上がりづらいので余程警戒するバッターでない限りストライク先行でいくことが重要
基本的にバッターはボールカウントに関わらずストライクカウントが増えるほど見逃しが減り、スイング率が高まる
例えば初球の場合ストライクゾーンであっても30%は見逃しをしてくれる
→ストライクで0ボール、1ストライクになるとストライクの見逃しは球種にもよるが8~15%
→ボールで1ボール、0ストライクとなるとストライクの見逃しは球種にもよるが18%~25%
ストライクカウントが増えれば見逃しの割合は減り逆に3ボール、0ストライクなどの場合は50%以上見逃しとなる
こうして考えると投手としてはやはりストライクを先行させることで、ボール球にも手を出してくれるように打者を追い込むことが重要
そのための引き出しとして
・高めのフォーシームで空振りやファウルを奪う
・カーブで見逃しを狙う(初球のカーブは35%が見逃し)
・右対左など対角の関係の場合は外のボールゾーンからアウトコースへのスライダー
などを取得しコントロールできるようにしておくとピッチングが楽になる
投げ方にあった変化球を選ぼう
投手にはそれぞれ特徴があり自分のフォームによって得意な変化球がある
例えばオーバースローの投手はチェンジアップやフォーク、縦に落ちるカーブが得意
逆にスリークォーターの投手はダルビッシュ投手のように横滑りのスライダーなどが得意
上記の図を見るとオーバースローの場合は高低での勝負になる、スリークォーターの場合は襷掛けのように変化が並ぶ
この傾向が分かっていると、右のスリークォーターの場合はインハイからアウトローにかけてのゾーンでの勝負が多くなりアウトハイやインローへはコントロールしやすい球種が少ないので投手攻略の参考にもなる、ストレートが浮く場合はインハイ
変化球の仲間関係
「フォーシーム、ツーシーム、チェンジアップ、フォーク」は握りを変えるだけで変化させることができる
スライダーやカーブで腕の振りが遅くなる選手はチェンジアップやフォークを習得しよう、高めのフォーシームのピッチントンネルを作れるというメリットもある
チェンジアップ
フォーク
「スライダー、カットボール、カーブ」も同じ系統の変化球
リリース時の手のひらの角度を変えることで投げ分けることが可能
個人差はあるがスライダーとカーブは中指で弾いた方が回転させやすい
カットボールは人差し指の方が弾きやすい
スライダー
カーブ
どのような回転をしたらどのような軌道で変化をするのかをイメージしておこう